富士通ビジネスシステム(FJB)は、富士通グループやビジネスパートナーとの連携による総合力をソリューションに生かすことで、ライバルとの差別化を図る。富士通のメインディーラーとしてリーダーシップを発揮し、連携による総合力を武器に収益を高め、成長への突破口を探る。
ソリューションとハードウェアを組み合わせ 顧客の課題をワンストップで解決
──富士通製PCサーバーのシェアの伸びが、外資系のハードウェアベンダーなどに比べて鈍い印象があります。シェアはベンダーの勢力を示す指標であり、富士通のメインディーラーである富士通ビジネスシステム(FJB)にとっても深刻な課題ではないでしょうか。
鈴木 われわれシステムインテグレータ(SI)にとって、ハードウェア単体の販売で利益を得るビジネスモデルはすでに限界にきています。顧客の側もハードウェアを求めているのではなく、問題を解決するソリューションを求めています。ただし、ソリューションが多く売れれば、結果的にこれを支えるハードウェアが売れていく構造がある以上、PCサーバーなど主力ハードウェアのシェアが足踏みしているとなれば、富士通グループ全体のソリューション力が鈍っている可能性も完全には否定できません。
国内の大手SIの中には、富士通グループのようにサーバーなどの主力となるハードウェアを開発しているグループと、そうでないグループとに分けることができます。双方ともソリューションをビジネスの柱として展開していることから、客先で競合してしまうこともしばしばあります。ハードウェアを持たないSIにしてみれば、ハードウェアを持つSIからハードウェアを調達すると、ある意味“敵に塩を送る”ことにもなりかねず、どうしても競合関係になりにくい外資系のハードベンダーから調達する傾向が強いように思います。
PCサーバーなどのシェアから論じれば、ソリューションとハードウェアの両方を追う富士通グループなどの国産ベンダーは、ハードウェアに依っている一部の外資系ベンダーに比べて若干不利との見方もできます。しかし、これを逆から見れば、ソリューションやハードウェアを組み合わせた力を発揮できるという有利な面も見えてきます。さらに、富士通本体の営業力や当社のような富士通グループのSI、古くから富士通グループとともにビジネスを展開しているビジネスパートナーの方々など、他社にはない富士通陣営の“総合力”が大きな強みとなっています。
──総合力を発揮するための取り組みはどのようなものがあるのでしょうか。
鈴木 富士通グループは、ミドルウェアやアプリケーションからハードウェア、サービスに至るまでワンストップで顧客に提供しています。当社が独自開発している業務アプリケーションのカバー範囲で不足している部分があれば、富士通本体の業務アプリケーションを提供するなど、柔軟な体制を組んでいます。当社では、中堅企業の経営革新を実現する業務コンポーネント群「ウェブエーエスコンポーネント」など、数多くのソリューションを独自に開発していますし、富士通本体では、国内中堅企業市場で高いシェアを誇るERP(統合基幹業務システム)「グロービア・シー」などを持っています。
自社またはグループ内で開発しているソリューションは、粗利率も高く、成長する上で重要な要素になるのは間違いありません。ただ、顧客企業すべての問題や課題をワンストップで解決しようとすれば、グループ内だけのソリューション力でカバーしきれない部分がどうしても出てきます。これには、ビジネスパートナーや開発パートナーなどが持つ有力なソリューションとの連携を強めることで対応していきます。これが富士通グループの総合力となり、競合他社に打ち勝っていくには、この強みを最大限に発揮していく必要があると考えています。
PCサーバーなどで勢いがある外資系ベンダーは、米国式の水平分業型ビジネスを得意としていますが、富士通グループは従来からのグループが結束した垂直統合型ビジネスを残しつつ、ビジネスパートナーなどと積極的な水平分業型ビジネスを展開する2本立てで臨んでいます。このビジネスモデルを強化することで、ソリューション力を高め、結果的にPCサーバーなどハードウェアのシェアで再び勢力を拡大していく考えです。
次の成長に向けた新しい施策を、多様化する顧客の要望にも対応
──ここ数年の売上高はほぼ横ばいが続いています。再び成長路線へ針路をとるには、どのような施策が必要だとお考えでしょうか。
鈴木 一時は赤字転落の苦い経験もしましたが、鈴木勲・前社長の構造改革が功を奏して、安定的に30億円規模の営業利益を出せるようになりました。これまで実施してきた構造改革は、どちらかと言えば、利益が薄い事業部門の売り上げを抑え、コストを削減して利益を創出する性格が強かったのに対して、これからは次の成長に向けた新しい施策が求められる段階だと考えています。今のままの経営を続けている限りにおいては、売上高、利益ともに横ばいの状態が続いてしまいます。
今後は、早い段階で踊り場から脱却し、成長路線への突破口を見つけ出せるよう努力していきます。突破口となるのはソリューションをベースとした新商材や、富士通グループおよびビジネスパートナーの総合力を活用したものになるかと思います。少し時間をかけて研究し、その結果、伸ばせると判断したところは積極的に伸ばしていきたいと考えています。
また、当社のビジネスターゲットとしては、主に2つの市場に分けることができます。1つは当社の主戦場である中堅企業市場で、もう1つは富士通本体と協業して展開する大企業市場です。
大企業市場におけるビジネスは、富士通が基幹業務システムの構築を担当し、当社は部門や地方拠点のシステム、ネットワークやハードウェアなどインフラ部分の展開などを担当します。ターゲットとする市場を峻別し、必要に応じた振る舞いをしていくことが大切だと認識しています。
──富士通の一部ビジネスパートナーから、FJBや富士通との協業強化を求める意見が出ています。
鈴木 当社とビジネスパートナーの間で、共通の課題やその解決方法があれば、富士通のメインディーラーである当社がリーダーシップを発揮し、協業を進めることも大切だと考えています。多様化する顧客の要望に応えるため、外部からハードウェアやソフトウェアを調達しなければならないケースが増えるという見方もあり、たとえば外部からの商材をビジネスパートナーと共同で購入することで、調達コストを低減したり、流通の効率化が達成できるとすれば、検討する価値はあると思います。
共同購買だけでなく、たとえば優れたソリューションを持つ開発力があっても、全国規模の営業力に欠けるビジネスパートナーがいれば、当社の販売力を活用したり、当社が仲介役となってビジネスパートナー間でソリューションを流通させたりと、協業に関してさまざまな選択肢が考えられると思います。具体的なことはまだ決まっていませんが、協業できる分野や共通の解決方法が見い出せる領域で、富士通のメインディーラーとしての役割を果たし、富士通グループやビジネスパートナーのビジネス活性化に貢献していきたいと考えています。
眼光紙背 ~取材を終えて~
2005年に世界最先端のIT国家となることを目指した政府の「e-Japan戦略」などの後押しもあり、公共や医療などのIT化は大いに進展。民間においてもIT需要が拡大した。しかし、こうした見方に反して鈴木社長は「未完の部分が多く残っている」と、IT化への取り組みは依然として道半ばだと考える。
「自治体レベルでは、市町村合併でIT化の先送りが続いており、医療分野はいまだに規制が多い。民間市場でも2極化が進んでいる」と、国全体で見るとIT化のバラツキが目立つと話す。規制緩和などの施策を継続することで、「IT需要の一段の拡大が見込める」と強気だ。
ただ、激しい競争にさらされ、IT商材の単価下落は今後も続くことが予想されることから、「これまで以上に生産性を高めなければ勝ち残れない」と、効率化に取り組む。コンサルテーションなど上流工程からの営業も強化する意向だ。(寶)
プロフィール
鈴木 國明
(すずき くにあき)1945年生まれ、神奈川県出身。69年、東京大学法学部卒業。同年、富士通入社。97年、常務理事。00年、取締役。01年、富士通ビジネスシステム監査役。03年、富士通取締役専務。05年6月29日、富士通ビジネスシステム社長に就任。
会社紹介
富士通直系のメインディーラーである富士通ビジネスシステム(FJB)は、2004年度(05年3月期)の連結売上高が前年度比3.8%減の1692億円、営業利益は同13.8%減の32億円、経常利益は同22.2%減の22億円と、ここ数年は一進一退の状況にある。00年度(01年3月期)はハードウェアの単価下落などの影響で一時赤字に転落したが、いち早く構造改革に着手し、営業利益ベースでは、30億円規模の安定利益を確保している。
今年6月29日に就任した鈴木國明社長は、「成長に向けた新しい施策」の研究を進め、伸ばせるところを積極的に伸ばし、成長路線への切り換えを急ぐ。FJBは、中堅企業の経営革新を実現する業務コンポーネント群「ウェブエーエスコンポーネント」など独自開発の業務アプリケーションやITマネジメントサービスなどのサービス事業、業種に強い営業力など数多くの強みを持っており、これに富士通グループやビジネスパートナーのソリューション力を組み合わせ、総合力を生かして成長路線への突破口にする考え。