印刷所や新聞社など大型の印刷機やスキャナを取り扱う印象が強いコダックは、ここ1~2年で急速に業態変革をしてきた。特に、今年度(2009年12月期)は、大型機からパーソナルユースの小型機までが揃うスキャナ販売に関連して、松浦規之社長が新たなパートナー制度を打ち出した。コンプライアンス(法令遵守)に関連した需要が高まっていることから、システム提案に組み込んでもらうために全国のSIerとの連携を強化する。
谷畑良胤●取材/文 大星直輝●写真
大型機は効率化を追求
──日本の市場では、印刷所関連のビジネスが主力になっているようですが、実際のところはどうなのか。実状をお聞かせください。
松浦 当社には大別してコンシューマビジネスとコマーシャルビジネスの二つがあります。(法人向けを対象にする)コマーシャルビジネスは、イメージングに関わるプロダクトが主になります。イメージングのなかではグラフィック・アーツ(印刷所関連)の売上高が大きく、ワールドワイドで約40%を占める。ただ、日本の市場は世界に比べて、この比率が高く、約70%に及んでいます。
──一般オフィスにITシステムを提供するベンダーには、なかなか理解しにくい領域ですが、どんな顧客にどんな製品を提供していますか。
松浦 大口の顧客だと、印刷会社や新聞社などになります。こうした企業に対し、印刷に使われる材料やシステムなどを提供している。画像と文字情報がレイアウトされた編集データを印刷ページ用にレイアウトする機械にはじまり、最後に印刷に必要な版に出力するための材料を製造・販売しています。
──週刊BCNも新聞ですが、紙媒体全体が世界的にシュリンクしつつある。
松浦 おっしゃる通り、新聞社をはじめ紙媒体は厳しい状況にあります。ここにきて広告関係の支出が絞られ、印刷会社は特に苦しいでしょう。そんな状況のなかで、富士フイルムなど競合他社も、印刷会社の合理化・デジタル化を促進できる製品を供給してきました。
──合理化・デジタル化できる製品とは、オンデマンド印刷のことですか。
松浦 オンデマンド印刷にいく前の段階ですね。昔はフィルムがあり、版があったりしましたよね。しかし、最近は処理したデータをコンピュータを介して直接、版にすることが当たり前になり、市場全体がマチュア(成熟)になっています。このため、省人化や材料費の削減などを行うための製品や材料を提供し、印刷会社などのコスト削減に寄与している。
──印刷所関連の領域は、まだ伸びしろがあるとみておられるのですか。
松浦 いま説明した領域は、確かにマチュアになっています。しかし、「電子写真方式」やインクジェットを使った「デジタル印刷方式」の両分野はまだ成長するとみています。当社の最新製品で言いますと、業務用印刷機の「NexPress 2500」が電子写真方式で、インクジェットですと「Versamark VL2000」などになります。
コスト面を考えると、一定の枚数を超えれば印刷所で印刷したほうが安い。だけど、少部数だったり、クレジットカードや公共料金の請求書など1枚ずつ内容が違う帳票の印刷に向く。この領域には、当社の「Versamark」シリーズがかなり使われています。
スキャナを使う流れが変わった。集中処理だけでなく分散処理する傾向が強まっている。そのニーズに応じたプロダクトラインを揃えた。
[次のページ]