UPS(無停電電源装置)や冷却装置などを提供するエーピーシー・ジャパン(APCジャパン)が、順調に業績を伸ばしている。サーバーの統合化やコスト削減の観点から、データセンター(DC)を中心に省電力化を求める企業が増えているためだ。今後は、ITと設備のインフラを融合させることに力を注ぎ、ビジネスを拡大していく方針だ。
佐相彰彦●取材/文 ミワタダシ●写真
DC事業の好調で売上高2倍に
──企業のITシステムへの投資抑制気運が強まっているなか、御社のビジネスの状況はいかがですか。
内藤 順調です。こんなことを言うのは憚られますが、実は先行き不透明な景況感が追い風になっているんです。
──と言いますと…。
内藤 UPSやサーバーの冷却システムなど、当社のDC向け製品がコスト削減に適しているとの評価が定着してきているんです。なかでも、拡張性が高いUPSの需要が増加している。そういうことから、昨年度(2008年12月期)は売上高が前年度の2倍近くに成長しました。ほかには、モジュール方式の冷却システムによる省電力化についてもニーズが高まっています。
──なぜ、こうした需要が出ているのでしょう。
内藤 この不況下に、大規模なリプレースができるDCが少ないからです。オフィスの電力は大型装置を構築しているのが普通ですよね。電源をさまざまな箇所に設置しておき、人のいない場所は電灯やエアコンを消しておくやり方が一般的ではないでしょうか。
これは、DCでも同じだといえます。大型装置を経由したサーバーの熱処理や省電力化は、サーバーがフロア一杯に配置されている場合には効果的です。だから、多くのDCが当たり前のように大型装置を採用してきた。ところが、最近はサーバーの集約が進み、物理的なスペースが縮小しています。しかも、IT投資抑制の一環として、当面はサーバーの台数を増やさないといった動きも出ている。そのため、広いスペースにもかかわらずサーバー配置が少ないという傾向が現れている。このようなケースでは、大型装置のままでは、電力や空調のコストが必要以上にかかる状況に陥ってしまいます。
そこで、当社では少ないサーバーラックにはUPSが適していることをDCに提案しました。加えて、サーバーを拡張した場合でも、UPSの追加で対応できることをアピールしました。つまり、サーバーの物理的なスペース集約が進むなか、電力や空調でも“ミニマムスタート”が実現できる点で需要が増えたわけです。
──具体的な削減効果の指標はありますか。
内藤 例えば、あるDCでは1年間で13億円程度かかっていた電力コストを約6億円にまで減らすことができた。こうしたケースはほかの案件で多々あり、最低でも現状の30%は削減が図れます。
──コスト削減だけでなく「プラベート・クラウド」など、今後は企業がDCなど1か所にデータを集中する流れになっています。このような状況も、ますます需要が増える要因ということですか。
内藤 そうなんです。当社の設立以来、訴え続けていたことが、まさに今、花開いたということです。また、当社は07年2月に仏シュナイダー社の傘下となり、今後はエネルギーが重要になるという「エナジーマネジメント」をグループ全体のコンセプトに掲げています。エネルギーを事業の主軸に据えるシュナイダーグループ全体でソリューションを提供する。これも、ユーザー企業を納得させることができた要素といえます。
エネルギーの観点でいえば、10年ほど先には使用量が現状の2倍に膨れ上がるとの予測がある。IT化を中心に、ますますエネルギーを使うことになるからです。しかし、CO2については現状の50%程度を削減することが求められている。このような矛盾をITベンダーは解決しなければならない。一方、ベンダーにとってはオポチュニティ(ビジネスチャンス)があるということです。これは当社にもいえることで、これを達成することに力を注げば、さらにビジネスが拡大すると確信しています。
──直近の数値目標は?
内藤 今年度も昨年度と同様に2倍程度の成長を果たします。
今後は、ITと設備の両方を提供していかなければならない。インフラの融合が重要なのだ。
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