市場をマトリックスで捉える
──製品戦略を固め、代理店経由のビジネスがメインということで、販売面も強化しなければなりませんね。
久保田 その通りです。全国網で拡販を図るため、「AD」という当社のパートナープログラムに参加するディストリビュータを増やしました。ネットワーク・バリュー・コンポネンツさんとネットワールドさんに加え、新しく住商情報システムさんが加わり、現段階で3社になっています。この3社は、当社の製品を積極的に売ってくれることをコミットしてくれています。ADとの協業関係が構築できたことは非常に大きい。今後は、ADのメリットになるよう、2次店に対する支援を強化していきます。
──具体的な策は。
久保田 サポート体制として、「リミテッド・ライフタイム保証」を構築していますので、これを訴えていきます。ユーザー企業に対して、故障した際の製品交換を長年にわたって実施するという保証なのですが、実は当社の製品は初期不良率が0.1%という実績があります。2次店にとっては、この保証を製品と組み合わせてユーザー企業に提供していくことによって、利益が確保できるかとみています。
また、2次店のカバレッジを広げていきたい。特定業界や特定地域に強いといった、特色のある2次店にアプローチしていきます。実際、ある地域では医療や地方自治体、財閥系などをユーザー企業として抱える地場の有力なSIerを確保しました。闇雲に増やすのではなく、業種や地域、企業規模などをマトリックス的に捉える。ADである3社と密に話し合いを進めることで、2次店を増やしていきます。
これまで当社は、大学など教育機関へ製品を提供することが多かった。しかし、今後は法人市場を多角的に攻めて一気に拡販していきます。
──シスコを担いでいた2次店などに対しても、パートナーシップになるようにアプローチするのですか。
久保田 もちろんです。地方では、シスコ製品を取り扱っている中堅SIerが多い。ユーザー企業も活用したいと考えているケースが多いのですが、価格が高いと認識しています。一方、当社の製品は価格が安く、しかもシスコさんに引けを取らない機能を搭載している。だから、販売しやすいと考えています。担げば、確実に案件獲得できる。2次店には、そう理解してもらえると確信しています。
──大手SIerを1次代理店として獲得するパートナープログラム「ACPD」がありますが、これをベースとした展開については…。
久保田 このパートナーシップについては、ユーザー企業のニーズを捉えながら、いかにソリューションを提案できるかがカギになってきます。とくに、クラウドを視野に入れたデータセンターに対するビジネスの拡大を図ります。「次世代データセンター」という新しい領域は、提案力がすべてです。そういった点では、「AD」と同様に密な情報交換が重要と考えています。
眼光紙背 ~取材を終えて~
社長に就任して真っ先に実行したのは、社員に対して「日々の業務を絞り込むように指示すること」だったという。例えば、1週間や1か月などの単位で行う業務を3種類ほど選ばせ、その業務に徹底的に専念させる。これは、重要な業務を理解させるため。「一度に多くの業務をこなそうと努力したところで、結局すべてが中途半端になってしまう」。一つの業務に集中できる時間が増えれば、営業担当者が案件を獲得できる可能性が高いとの判断だ。結果、営業担当者が販売代理店に同行するケースが増え、「販売パートナーとの協業関係が深まった」。
また、「マネジメントは、社長が責任をもって遂行する」と説明し、すべての社員に現場へ出ることを訴えた。もちろん、久保田社長自身も現場を回る。外部状況の把握で、「社員が当社の進むべき方向性を理解した」。足下をきちんと固め、将来の成長を見据えている。(郁)
プロフィール
久保田 則夫
(くぼた のりお)1983年、東京電機大学理工学部を卒業。通信機器メーカーでエンジニアとして業務に従事。96年に日本ルーセント・テクノロジー(現・日本アルカテル・ルーセント)で代理店営業に携わる。01年、同社の分社化にともない日本アバイアに移籍し、チャネル販売など各営業部の本部長を歴任。06年、エクストリーム・ネットワークスに営業本部長として入社し、07年8月に代表取締役社長に就任する。09年4月、H3Cテクノロジージャパンの代表取締役社長に就任。現在に至る。
会社紹介
米スリーコムと中国ファーウェイスリーコムが合弁で設立したファーウェイスリーコムの設立にともない、日本法人が設立された。今は、「H3C」という社名に変更されており、中国本社は米スリーコムの子会社になっている。ワールドワイドでは、シスコシステムズやアルカテル・ルーセントなど大手メーカーに匹敵する実力をもつ。一方、日本では知名度が低いという課題の払拭がポイント。