学習管理システム(LMS)ベンダー大手のシステム・テクノロジー・アイが提供する主力の学習支援ソフトウェア「iStudy」が、今年8月で発売10周年を迎えた。eラーニング関連のシステムとして数々の革新を遂げてきた同製品は、次の10年を担う「誰でも学べる」新たな学習環境に生まれ変わるべく、さらなる開発が進んでいる。松岡社長は「母体が小さいから小回りがきく」と、自社の強みを認識している。その強みを生かして、顧客の要望を満たす製品へ刷新していく考えだ。
谷畑良胤(本紙編集長)●取材/文 ミワタダシ●写真
遠隔での実機研修を実現へ
──創業当時と比較すると、事業が多様化していますね。
松岡 残念ながら、研修事業はダウンしています。一方で、LMS(学習管理システム)を中心とするソリューションは、対前年比で倍ぐらいの伸びを示している。現在、当社の事業の3分の1は、LMS事業が占めている。2004年にLMS事業を開始していなければ、現在の3分の1はなかったわけですから、振り返ると恐ろしくなりますね。
──研修事業と学習支援ソフトウェア「iStudy」シリーズだけでは、いまごろ大変でしたね。
松岡 LMSを開始した当時、「教育パッケージ会社がサーバー・パッケージなんかつくって大丈夫か?」と、周囲から心配する声をよく聞いたものでした。ところが、現在は、LMSとそれに関連するeラーニングともに国内トップを狙う位置まできました。あの頃に踏ん張っておいて、本当によかったと思っています。
──研修事業が落ちているそうですが、御社の教室はIT業界で評判が高い。
松岡 高度IT人材を育成するには、実機を使った研修にターゲットを絞った内容にしていく必要があります。その例として、日本オラクルの許可を得て「Real Application Cluster」の実機を使った研修コースの開発にチャレンジしています。「本当に必要なエンジニア」に養成するためのスキルを実機で実現する内容にしたい。
さらに、近々明らかにしますが、われわれの実機環境をインターネットを介して自宅やオフィス内からアクセスして、実機の研修を受けられるようにするサービスを計画中です。
──遠隔で実機を使った演習ができるということですか。
松岡 そうです。ブラウザ上でサーバーが使える「iStudy Virtual Lab」というブランドで、今年9月からのサービス提供を予定しています。これは当社の仮想サーバーで教室用に導入しているマシンを、インターネット環境で使ってもらうイメージです。
最新の研修環境を揃えるには、それなりのパワーが必要です。当社が投資して整備したシステムを他の教育研修事業会社や自社で研修するITベンダーなどに、1日単位あるいは時間単位で貸し出す。教室で対面して講師が指導する利点は確かにあります。ただ、重要なのは実際に実行環境をつくったり、試したりすることです。わざわざ教室に出向かずにネットワークを利用すれば研修ができる時代ですので、いつでもどこでも利用できるニーズはますます高まるはずです。
ネットワークで研修ができる時代。“いつでもどこでも”のニーズはますます高まる。
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