中堅・中小企業市場を攻めるための戦略的SI会社――。そう言われながら、大企業のユーザーが多いのが現実で、本来の役割を果たせていなかったNECネクサソリューションズ(NECネクサ)が変わろうとしている。グループ内の中堅企業ビジネスを担当している組織・人員をNECネクサに集約して今年10月からスタートを切ったのだ。陣頭指揮を執るのは、NECで営業畑を歩んできた森川年一社長。「東名阪の中堅企業だけで年商2000億円にまで引き上げる」と強気で、鳴かず飛ばずだったこれまでの実績を塗り替えようとしている。
木村剛士●取材/文 馬場磨貴●写真
中堅任されながら現実は4割
──7月6日、NECは東名阪の中堅企業向けビジネスをNECネクサソリューションズ(NECネクサ)に集中させる方針を発表しました。NECグループの中堅企業ビジネス担当者がNECネクサに集約されることになります。就任からバタバタした日が続いたのでは?
森川 当然ですが、まずは会社の現状を把握するために、現場を回ってお客さんの話に耳を傾けました。そしてもう一つが、東名阪の中堅企業向けビジネスに特化した体制づくり、経営方針をどうするか――。これを考えることに時間を費やしてきました。
──NECネクサは今回の発表前から、中堅企業市場を中心に攻めると言っていました。それなのに、今回グループ全体で組織再編に踏み切ったとなると、現状は中堅向けのSIerではなかったということですか。
森川 「2:5:5」という数字があります。これは、売上高比率を表しています。アウトソーシングサービス関係の売上高が200億円、大手企業向けビジネスが500億円、そして中堅企業向け事業が500億円です。中堅向け事業は全売上高の4割程度しかありません。中堅を任されていながら、このマーケットに進出しきれていなかったのが現実です。
でも、何もやってこなかったわけでは決してありません。2年前から顧客分析を始め、市場の・見える化・活動を推進し、既存顧客の要望や攻め切れていない顧客数、NECネクサへの期待などをしっかりと把握しました。その成果もあって、中堅企業向けビジネスは2年前に比べて20%伸びているんです。
──伸ばしているのに今回の話がもち上がったということは、限界があったということですか。中堅市場に集中できない事情があった、と。
森川 大手企業の売り上げが500億円もあると、どうしても大手顧客中心の管理体制にならざるを得ません。大手は案件規模が大きく、数十億円のSIビジネスが動くケースがあります。もし何かマイナスの事態が起きれば、経営に与えるインパクトは大きいですからね。そうなると、中堅市場向けビジネスに費やすリソースが限られてしまう。
それと、大手と中堅のユーザーとでは、考え方というか要望が違います。中堅のユーザーは、経営課題をすぐに解決できるITソリューションを迅速に手に入れたいというニーズが大手よりも強い。そうなると、中堅企業向けSIを専門的に手がける組織が必要です。これらの複数の理由から、今回の構造改革に至っています。
──今回、フォーカスしたのは中堅企業だけでなく、地域も東名阪に絞りましたが、これら以外の地域を担当するのは?
森川 基本的にNEC本体の支社・支店が担当することになります。なので、東名阪以外はNECが大手から中堅市場まで手がけます。それが最もスピーディに動ける最良の形と判断しました。
──2008年度実績で東名阪以外の売上高はどのくらいでしょう。
森川 約65億円。全体の5%程度です。
──先ほどから「中堅企業」と表現されていますが、中小企業については?
森川 一概には言えませんが、年商100~500億円の企業が一般的に中堅企業と呼ばれていますよね。この規模のユーザーは、東名阪には約7000社存在するとみています。基本戦略として、この領域を徹底的に攻めます。では、100億円未満はやらないのかといえば、決してそうではありません。100億円未満のユーザー向けビジネスもやります。ただ、100億円以上とそれ未満では、アプローチの仕方を変えます。
100億円未満の企業は中堅企業以上に数が多い。NECネクサ単独で全顧客にアプローチするのは不可能です。なので、この領域はNECの販売店さんと協力して攻め込みたいと思っています。NECネクサが自ら営業し、案件獲得のためのモデルケースや成功事例をつくって、それを300社ほどの販売店に横展開するような形が望ましいと思っています。
中堅市場を任されながら、攻めきれていなかったのは事実。これからは違う。ユーザーと市場を知り、それに適したソリューションを提供する。
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