5年後に年商2000億円に
──年商はここ数年横ばいが続いています。東名阪の中堅企業に集中することで、業績はどの程度上向きますか。中期的な展望を教えてください。
森川 今年度は事業移管の関係上、売上高は減少し、来年度は1000億円からのスタートとみています。これを4~5年後に2000億円まで引き上げたい。基幹システムでは現在600社程度ですが、これを1200社、7000社のうち20%はカバーしたいと思っています。
また、この7000社のうちサーバーやPCなどNEC製品を一つでも利用していただいているユーザーは22~23%程度ありますが、これを35%程度にはもっていきたいと考えています。
──ここ数年、売り上げは変わらず、単価の高い大企業向けビジネスも減る。そうなると、かなり挑戦的ですよね。どんな組織で、どう開拓しますか。
森川 まず組織ですが、NECネクサの従業員は現在約3000人で、内訳は営業が950人、SEが1100人、アウトソーシングが450人、そのほかのスタッフが500人います。NECグループから東名阪の中堅企業向けビジネス担当の営業やSEが加わり、その一方で東名阪以外、大企業向けの従業員はNECなどに籍を移します。東名阪以外の支社・支店は基本的に閉鎖します。そうすると、従業員は合計で2500人規模になります。従業員は減りますが、一方で中堅企業向けビジネスに精通した人員は増えます。
──営業担当者やSEの最適配置だけでなく、ほかにどんなテコ入れを?
森川 三つあります。一つには、市場とユーザーの分析を戦略的に手がける部隊。2年前から始めていますが、もっともっと市場を・見える化・しないといけない。
二つ目が、新規ユーザーとのコンタクト機会を増やすための施策です。中堅企業は大企業よりもユーザー数が多く、まだ当社と接点をもっていない企業も多い。セミナーを開いたりテレセールスをかけたり、方法はいくつかあると思いますが、とにかく新規ユーザーとのコンタクト機会を増やす施策が必要と考えています。
それと、最後は営業支援部隊。営業担当者が顧客との商談に集中できるような、バックアップ体制は増強しなければならないと思っています。
──具体的に攻め込むためのソリューションは? とくに基幹系システムの構築をどの程度増やせるかがカギを握ると思います。
森川 これまでNECネクサは「GRANDIT」など複数のERPを担いできた経緯があります。今後はNECの自社開発パッケージ「EXPLANNERシリーズ」を中核に売りたいと考えています。
といっても、社内にも誤解があるのでこの際はっきりと言いますが、他社製品を扱わないわけではありません。従来通り、他社製品も取り扱います。ただ、これまでよりも「EXPLANNER」を中堅企業に強く推進しようと思っています。ユーザーの要望に的確・迅速に応えるためには、やはり自前の製品が適切な面があります。
正直いうと、「EXPLANNER」は他社製品に比べて機能的に劣っていた部分があったと思います。ただ、ここ数年で機能強化を図って追いついてきました。NECも投資を約束していますし、中堅に適したERPとして成長させ、メインに据えて売りたいと思っています。
眼光紙背 ~取材を終えて~
前社長の渕上岩雄氏は、勢いある語り口調が印象的で、「NECネクサの旧態依然とした体制をぶっ壊す」といわんばかりに、構造改革を推進し、改めて市場とユーザー分析を開始した。その成果として、中堅企業向けビジネスが2年前と比較して20%伸びる結果につながった。
中堅企業向けビジネスの強化は、NECネクサが抱えていた長年の課題。その解決のために、NECネクサ社内だけでなく、NECほかグループ企業を巻き込んだ大幅な組織再編に動いたことは大きな意味をもつ。ただ、トップとすれば、その分、責任が重いということだろう。
インタビューを終えて、森川社長の率直な感想を言えば、渕上氏に引けをとらないバイタリティに溢れる人物。話を聞いていると引き込まれるようなその雰囲気も似ている。
渕上氏の経営をもう少し取材していたいと思っていたが、森川体制も楽しみだ。(鈎)
プロフィール
森川 年一
1949年9月29日、奈良県生まれ。70年3月、奈良工業高等専門学校卒業。同年4月、NEC入社。94年、第一流通・サービスシステム事業部第五システムインテグレーション部流通業SI専任部長。97年、流通業SI事業部第二システムインテグレーション部長。2000年、リテールソリューション事業部統括マネージャー。02年、リテールソリューション事業部長。05年、支配人兼首都圏営業本部長。06年、執行役員兼首都圏営業本部長。09年4月、NECネクサソリューションズ代表取締役執行役員社長に就任。
会社紹介
NECネクサソリューションズは、1974年に設立された日本電気情報サービスが母体。01年にNECのSI子会社5社が合併、現社名になった。システムおよびネットワーク構築、ITサービスを手がけるNECグループの最有力SIerでNECの100%出資子会社。今年7月、NECが定めた方針で、グループのなかで東名阪地域の中堅企業向けビジネスはNECネクサソリューションズがすべて担うことになった。