アドビシステムズは、チャネル経由のライセンス販売に力を入れている。パートナーが法人向けでアドビ製品を使ってソリューション販売する機会が増えてきたためだ。2009年1月、同社の社長に就任したクレイグ・ティーゲル氏は、欧米でチャネル流通の担当幹部として活躍。日本法人に着任してからも、持論である「パートナー重視」を掲げ、改革を断行。北米で先行実施中の同社クラウドを2011年に日本へ上陸させ、パートナー経由の販売を始めることも示唆するなど、IT業界内の注目度は高まる一方だ。
ユーザー知る活動で密接度増す
──前社長が突然退任して空白だった社長の後を引き継ぎ、1年が過ぎました。この間にどんなことを実現しましたか。
ティーゲル この1年間、とくにわれわれが集中してきたのが、エンドユーザーに目を向け、「さらに密接な関係を築くにはどうすべきか」ということです。なかでも、日本の大手企業などになりますと、例えば、クリエイティブ・ツールをはじめ、「Acrobat」や「LiveCycle」などを数多く使っていただいている顧客が多い。2009年からは、かなりのリソース(経営資源)を直販チームに投入し、日本企業のトップ200社へのアプローチをかけ、この成果として、より密接な関係を構築できました。
──製品面の取り組みでは、どのような点で進捗があったのでしょうか。
ティーゲル 09年は、ビデオ関連の製品にも力を入れました。主要なプロダクションのエージェントや放送局と手を組みながら、「Flash」やクリエイティブ・ツールの販売を推進してきたのです。同時にNTTドコモを含む携帯電話キャリアのパートナーとも協力関係を強化し、携帯電話向けのソリューションを開発してきました。
また、リッチインターネットアプリケーションの「AIR(Adobe Integrated Runtime)」や「Flash」を技術基盤として活用を推進するコンソーシアム「オープンスクリーンプロジェクト」で、携帯電話やコンピュータ、さらにはテレビでも共通の体験を提供する取り組みを進めてきました。
──業績面では、どんな実績を上げられましたか。
ティーゲル 具体的な業績の数字を述べることはできませんが、厳しい年ではありました。ただ、2010年に向けて土台を築くことができた。当社の会計年度である09年11月期中にクリエイター向け制作ツール群「Adobe Creative Suite 4」をすべて出すことができたほか、ほかにも優れた製品をリリースしました。このようにフィチャー(曖昧さを回避)できるラインアップが用意できたので、厳しいなかでもユーザーにアドビ製品の予算を確保していただけました。
──社長就任当初、日本で注力すべき項目のなかで、「パートナーとの関係を密接にする」ことを挙げていました。そもそも、なぜそう考えたのですか。
ティーゲル アドビの日本法人社長に就く前の私のキャリアは、英国・北米地域で私自身がリセラーとしてビジネスを経験してきた。パートナーとの友好関係を深めることで、どれだけビジネスを広げることができるかを理解しているからです。将来の関係を築くためにも、いまのチャネル構成を理解することの重要性を感じ、09年中に不況が緩和する可能性のある2010年に向けた布石を打とうと考えたのです。
──日本市場での課題は?
ティーゲル ユーザーをよりよく知るには、単体で購入していただくより、ライセンスで買っていただくほうがいいと考えている。今後数年にわたってはチャネル・パートナーとともに、ユーザー利用をライセンス環境に進めていくアプローチをします。そうすることで、もっとユーザーを知ることができ、ソリューションをクロスセルをする機会が増えます。
チャネル・パートナーとともに、ユーザー利用をライセンス環境に進めていくアプローチを行う。
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