Special Issue

<アドビ システムズ特集>新ライセンスプログラムを導入

2009/10/29 19:55

週刊BCN 2009年10月26日vol.1306掲載

 アドビ システムズは10月13日より、新しいボリュームライセンスプログラム「Adobe Volume Licensing Program(AVL)」を開始した。AVLは、前プログラムに比べて購入プロセスが合理化されたほか、ライセンス管理サイトの日本語化や管理機能の拡充を行った。この改善により、同社製品のライセンスを販売するパートナーは、顧客のライセンス管理がより容易になり、同時にコスト削減を提案でき、これまで以上に販売機会を増やすことができる。また、「ソフトウェア資産管理」のニーズが顕在化されている自治体向けにCLPプログラムも用意。自治体向けIT需要が高まるなかで、新たに同社製品を売り始めるSIerなどにとっても付加価値をもたらしそうだ。

2年ぶり改定の「Adobe Volume Licensing Program(AVL)」

Adobe Volume Licensing Program(AVL)(http://www.adobe.com/jp/avl/

ライセンス購入プロセスの短縮化を実現

 アドビ システムズがボリュームライセンスプログラムを見直すのは2年ぶり。これまでのプログラムは、「Adobe Open Options(AOO)」で、パートナーとその顧客であるユーザー企業の継続的な関係構築に役割を果たしてきた。AOOのもとでは、企業の部門単位で導入できる「TLP」と、全社規模で一元的に導入・調達・管理でき、2年間の利用でディスカウントされる「CLP」を展開していた。

 今回開始した新ボリュームライセンスプログラム「Adobe Volume Licensing Program(AVL)」では、「パートナーが当社ソフトを販売する際に、AOOで生じていたライセンス販売上の手間を軽減し、エンドユーザーでのライセンス管理を能動的に行える仕組みにした」(シニアライセンシングマーケティングマネージャー・宮澤啓一郎氏)という。

シニアライセンシングマーケティングマネージャー 宮澤 啓一郎氏

 パートナーがアドビ製品のライセンス販売を合理化するうえで、「AVL」で実現させた利便性を高めるための改善点は多岐にわたる。2年間の契約で継続的にボリュームディスカウントが適用される「CLP」では、契約手続き方法や契約満了時の更新を見直している。

 「AVL」では、「CLP」のメンバーシップ登録手続きを簡略化するためWeb上で手続きが可能な「オンラインエンロールメント(オンライン登録)」を新たに導入した。これまでは、書面での手続きだったことから、契約までに1週間程度かかるケースがあった。「企業・団体が期末の緊急的な予算でライセンス購入費を充てる際、場合によっては手続き上の都合で導入が間に合わないことがあった。しかし、AVLではパートナーにとって、短納期への対応や顧客満足度向上に役立つように、すべての煩雑さが解消されている」(宮澤氏)という。

 従来は、「CLP」の2年間の契約更新時にそれまでのディスカウントレベルが引き継がれないケースがあったが、「この更新時の条件を見直した。初回購入時に必要な25,000(左下チャート参照)ポイントあれば、更新後のディスカウントレベルが必ず継続されるようになった。エンドユーザーは、長期間にわたってメンバーシップを保持でき、パートナーも長期的にビジネスボリュームを確保できる」(宮澤氏)と、まずは販売面で、パートナーが継続的に顧客とのビジネス関係を構築できる土壌を作った。

 また、「CLP」に関しては、ターゲットを自治体に特化したライセンスプログラムを新たに走らせる。宮澤氏は「自治体でのアドビ製品の購入は、パッケージ購入やTLPを利用した部門発注であった。自治体において組織全体のソフトウェア資産管理を徹底する意味から、CLPのニーズが高まっている」とし、「CLPガバメント」と呼ぶ新しい官公庁向けボリュームライセンスを開始した。

ライセンス管理サイトの機能強化

 さらに、同社は国内パートナーやユーザー企業にとって高いハードルとなっていたライセンス管理用のWebサイト「License Web Site(LWS)」の機能を、AVL導入と同時に大幅に見直した。まず、最も大きなネックとなっていた英語版のユーザーインタフェースを日本語に変更。さらに、LWSの機能強化により、ログインとパスワード機能の改善やプロセスをさらに自動化しライセンス管理時間の短縮を実現した。ログインIDは、エンドユーザーの電子メールアドレスにすることで、忘れにくく、管理しやすくした。

日本語化されたライセンス管理用のWebサイト「LWS」の新画面

 「AVL」がパートナーやユーザー企業にもたらす利便性の向上はほかにもある。「AVL」では、将来的にライセンスの一括購入で導入コストと包括的費用の削減ができる「プロダクトプール」と呼ぶ新コンセプトを導入していく。このコンセプトでは、デスクトップ製品群とサーバー製品群がバラバラのライセンス体系となっていたものを包括化し、今まで以上に一括購入しやすくする。「AVL」の実施当初は、「アプリケーションプール」の運用を開始。次の段階で「サーバープール」を始める予定にしている。

各販社に有資格者10人へ

 新しいボリュームライセンスプログラム「AVL」のもとで展開する販売戦略としては、このプログラムを早期に軌道に乗せるため、AOO下で取り組んできた認定制度をより強化し、ライセンス販売のスペシャリストを育成する。

 同社は2008年8月から、「CLP」を中心としたライセンス販売の専門知識を備えたスペシャリストを認定する「Adobe License Master Program」を開始した。これまでに3回の認定資格試験を実施し、148人が合格している。同社では、このスペシャリストを認定パートナーに各10人以上が在籍できるよう、人材養成を急ぐ。宮澤氏は「当社のAcrobatやPhotoshop、Illustratorなどクリエイティブ系のデスクトップ製品だけでなく、将来的にはサーバー製品に広げることを検討している。これにより、トータルサービスとしてビジネスのチャンスが広がる」ことを訴求し、有資格者を増やしていく計画だ。

 同社の国内販売は現在、販売本数全体の6割がパッケージ販売で、残りの4割がライセンス販売となっている。これを5年後には「4対6で、ライセンス販売の割合を高める」(宮澤氏)と、パートナーにとってビジネスが長期的に安定する「ストック型」へ順次移行させていく考えだ。

  • 1

関連記事

アドビ、学生・教職員向けタイトルを一新、価格や対象購入者を大幅改定

アドビシステムズ チャネルセールス本部長 佐野守計

<解剖!メーカー流通網>6.アドビシステムズ 複数製品を組み合わせた展開へ

外部リンク

アドビ システムズ=http://www.adobe.com/jp/