「Avance」でSMBを開拓
──現段階で、具体的な戦略や事業拡大策などは決まっているのですか。
飯田 IAサーバーの無停止化が可能なソフト「Stratus Avance」を、SMBに浸透させようと考えています。7年間ほどソフトメーカーに在籍していましたので、そのノウハウも生かしていきます。
──「Avance」を売るための体制は整っているのですか。
飯田 もちろんです。ディストリビュータのシーティーシー・エスピーと販売契約を締結しています。また、NECや日立製作所、東芝などIAサーバーのメーカーや、サーバーCPUメーカーのインテルなど、協議会設置の話をもちかけたことのあるメーカーとの協業を強化します。サーバーメーカーとは、これまでもFT技術のOEM(相手先ブランドによる製品供給)を行ってきましたから、協調関係を保っています。加えて、当社のソフトでIAサーバーが拡販できることをアピールしていますので、協議会の設置は決して遠くないと考えています。ほかにも、デルや日本ヒューレット・パッカード(日本HP)など海外のメーカーとも、お互いにメリットがあるパートナーシップを築きたいと考えています。
──対象領域が異なるので「敵対」とまではいいませんが、同じ「サーバー」という領域のメーカーを味方につけるのは、意外な策ですね。
飯田 「サーバー」という枠に入っているからといって、すべてのメーカーが競合相手ではありません。しかも、販売パートナーさんも言うように、最近はIAサーバーのコモディティ(日用品)化で販売がうま味のないビジネスになりつつある。ただ、リプレース需要がまったくないというわけではありません。いかにリプレースを促す武器をもつかが重要なのです。その意味で、IAサーバーメーカーには「Avance」はIAサーバーのリプレース需要を掘り起こすツールと理解してもらっています。
──「Avance」の強みは何ですか。
飯田 機能的な話になりますが、このソフトは仮想化された統合サーバーの障害を事前に自動検知することに加え、システムを止めずに99.99%以上の連続稼働が可能です。シトリックス製の仮想化ソフト「XenServer」をベースに、当社が無停止型サーバーで培った高信頼性技術を実装して、2台の物理サーバーを一つの仮想マシンとして複数稼働もできます。ほかにも、ハードの診断機能によってシステムの異常や障害を予測して障害部分をシステムから切り離せるようになっていたり、異常を検知したサーバー上の仮想マシンをもう1台の安全なサーバーに自動的に移動して継続処理したりすることも可能です。
最大の売りは低コストを実現できることです。外部ディスクを必要とせずに2台の物理サーバーを接続することでミラーリングを標準で実施できる機能や、SANなどの高価な外部ストレージやミラーリングソフトが不要な点などで、一般的な仮想化インフラに比べて半分以下のコストで導入できます。また、インストールが15分で完了する簡便性や、高度なスキルを必要としない運用面なども強みになっています。SMBが高い信頼性をもつ仮想化インフラを構築することに、大きく寄与すると確信しています。
──FTサーバーについて、販売を促進する策はあるのでしょうか。
飯田 FTサーバーは、引き続き官公庁や金融・通信などの主要な領域で拡販に力を入れていきます。とくに、仮想化に関するニーズが高まっていますので、製品としてはVMwareなどとの連携を強化した製品をベースに、販売パートナーさんと一緒にソリューションを考えていきます。
また、日本でハードの生産工場を建設中で、今春から稼働する予定です。この工場を生かすことで、迅速な物流体制の整備を進めていきます。
眼光紙背 ~取材を終えて~
再び日本ストラタステクノロジーの社長に就任し、社屋に足を踏み入れた時に感じたのは「活気がある」ことだったという。
自ら会社を立ち上げた頃は、市場を創造するという意気込みに溢れていた。今の社内の雰囲気を感じ、当時を思い出した。
「あの頃と変わっていない。ただ、社員の平均年齢は当時と異なる。今のほうがずいぶん若いよ。自分は歳をとったけれどね」と笑う。社内に溢れる活気に、さらなる成長の可能性を感じたに違いない。
実は、飯田氏がイージェネラの社長を務めていた時、インタビューしたことがある。プロフィールに書かれていなかったので、公にしないのかな、と考えていたのだが、のっけから「イージェネラの時も取材してくれましたね」と飯田社長。今回のインタビューも当時と変わらず、飯田社長の快活な語り口調が印象的だった。(郁)
プロフィール
飯田 晴祥
(いいだ はるよし)1949年7月生まれ。73年、明治大学商学部卒業。日本IBMや日本タンデムコンピューターズ(現・日本HP)で営業関連業務に従事。86年に日本ストラタスコンピュータ(現・日本ストラタステクノロジー)を立ち上げ、代表取締役社長に就任。米国本社の副社長も兼務する。03年まで同社のアジア太平洋地区の事業を統括。その後、UGS PLMソリューションズ、ソリッドワークス・ジャパンなどでトップを歴任。10年1月1日に日本ストラタステクノロジーの代表取締役会長兼社長に就任。アジアパシフィックプレジデントも兼務する。
会社紹介
1986年、日本ストラタスコンピュータとして設立。停まらないコンピュータFTサーバーメーカーとして、国内市場で他社とは一線を画するビジネスを手がけている。昨年、連続可用性仮想化ソフト「Stratus Avance ソフトウェア」を市場投入。IAサーバーの無停止化が可能なソフトとして注目を集めている。