ストレージ・バックアップ機器の販売に強いキング・テックが、隣国・中国でのビジネスを伸ばしている。機器販売のノウハウを生かしてATM(現金自動預け払い機)などの中国向け販売を拡大。今期(2010年9月期)連結売上高は前年度比で約50%増を見込む。中国大手SIerのデジタル・チャイナグループや、中国ビジネスに強い日本のSIerであるSJIなどとの業務提携にもこぎ着け、国内外でのビジネス拡大に弾みをつける。
意外にもATMの販売が好調
──中国向けのビジネスが好調のようですね。
王 ここ数年は、ATMの中国向けの販売が伸びています。国内はIT需要の頭打ちやシステム機器の単価下落もあり、売り上げの伸び幅はそれほど大きくないのですが、中国向けは大きく拡大。こうした状況が後押しして、今年度(2010年9月期)は、国内と中国の売り上げ比率がおよそ4対6と、初めて海外が国内を上回る見込みです。実数では、昨年度(2009年9月期)の連結売上高は約40億円だったのに対し、今期は60億円ほどに増える勢いで推移しています。
──御社はもともとバックアップ用ストレージ製品の企画・販売が主力ではないのですか。
王 そうですよ。この分野が主力であることに変わりありません。データ容量の増大などでバックアップ用のストレージやサーバーの需要は安定的に伸びており、当社はバックアップ系ストレージに特化した百貨店的な存在です。それはそれとして、力強く経済発展を続ける中国は、さまざまなIT機器の需要が拡大しています。数年前までは、今ほどATMが売れるとは予想していませんでした。国内向けのビジネスの伸びが緩やかなのに対して、中国向けの売り上げは今期倍増する見込みです。
──ATMは、中国のどんな分野に売れているのですか。
王 銀行の窓口をはじめ、コンビニや大きな事業所などさまざまです。中国にもネットバンキングが普及し、銀行の窓口に行く機会が減少しています。代わりに営業時間が長いコンビニや、会社近くのATMを利用するケースが増えているのですね。沖電気工業や日立オムロンターミナルソリューションズなど、マルチベンダー方式で商材を扱っているのも、当社の強みです。
──中国大手SIerのデジタル・チャイナ・ホールディングスグループとも密接な関係を築いておられますね。
王 中国は広いので、例えばATMやストレージなどの商材を売るに当たって、設置や保守サービスなどは当社だけでできるわけではありません。中国全土をカバーする販売・サービス網をもつデジタル・チャイナのような有力SIerと協業することで、スムーズな機器販売を実現しているわけです。
ATMの販売からは話が外れますが、当社はデジタル・チャイナと意外に長くおつき合いをさせていただいているのですよ。デジタル・チャイナは、日本のパソコンなどのIT機器を多く販売しています。なかでも東芝の「dynabook」は人気商材ということもあって、当時、東芝のパソコン事業の拡大を積極的に推進していた西田厚聰氏(現・東芝取締役会長)が、デジタル・チャイナの郭為氏(現・デジタル・チャイナ・ホールディングスCEO)ら幹部を日本に招いたことがあったのです。
ちょうど、東芝が公式スポンサーになった日韓共同開催のサッカー「2002 FIFAワールドカップ」のとき。来日中は、試合を見たり、夕食をともにしたりと、西田さんや郭さんら経営幹部たちは交流を深めました。私はIT業界に詳しく、日本語も大丈夫なので、同席させていただく機会があり、それ以降、デジタル・チャイナのトップマネジメントの方々とは深くおつき合いさせていただいています。
ロングターム・グッドリレーションシップ。
中国ビジネスでは、人と人のつながり、信頼関係が何よりも重視される。
人脈こそが当社の強みであり、財産だ。
[次のページ]