高品質のITサービスを中国でも
──伸ばすITジャンルとしてはサービスに照準を合わせていますが、地域でみると海外に積極的ですね。とくに中国には徹底攻勢をかけています。4月1日から、大連市に設立した子会社が本格的に営業を始めました。
山田 国内市場では当社も苦しいですが、ユーザー企業も苦しいんです。当然、成長の伸びしろが大きいマーケットに出ようと考え、行動しています。そうなると、出てくるキーワードは、やはり中国。当社のユーザー企業でも、中国に進出した企業が増えています。
ユーザー企業は、中国でも日本と同じ品質のITサービスを受けたいと思っています。ただ、そのプロバイダがいない。ですから、当社が国内で培った高品質なITサービスを中国でも提供するのです。大連市に運用監視センター「SMAC」を真っ先に設立したのは、そのためです。
まずは日系企業を対象に、情報システムの保守・運用サービスを中心に提供しますが、将来的には中国企業もターゲットにします。当社の自社ソフトの中国語化も進めており、商材も増やします。拠点は、大連市、上海市に加え、今秋には広州市にも置く予定です。
昨年度の海外売上高は1億円程度で小さいですが、来年度には10億円弱、2015年には100億円まで増やすつもりです。子会社の捷報(大連)信息技術有限公司は、大連銀行に運用監視サービスを提供しており、子会社のリード・レックスがもつ製造業向けERP「R-PiCS」は中国での納入実績もあります。手応えを感じていますよ。
──サービスへの集中、海外事業の強化となれば、事業会社の整理も必要になってくるのではないですか。
山田 「相乗効果が発揮されていない」という指摘は社内外からいただいています。相乗効果が発揮できていなかったり、投資が重複していたりなどの課題があるのは事実です。なので、今後事業会社の統合や協業の必要性は感じています。その時々で求められる組織は違うはず。社員にとっては目まぐるしいかもしれませんが、俊敏に組織を変化させていくつもりです。
眼光紙背 ~取材を終えて~
前社長の石黒和義会長は、大胆な施策を矢継ぎ早に打つカリスマ経営者。ホールディングス体制の移行や相次いでM&Aを仕掛けるなど、変化を恐れない人物だ。今回のインタビューを終えて、雰囲気は異なるものの、変化を拒まない考えと姿勢は共通していると感じた。山田慎社長も、成長のためには現状を代える必要を感じ、また「常に変化し続けなければならない」とも言っている。相乗効果が発揮できていない現在のグループ体制にもメスを入れる考えだ。
辣腕経営者が実現を夢見た悲願「売上高1000億円、営業利益率5%の確保」に改めて挑戦するJBCCホールディングス。石黒会長も達成できなかった目標に山田新体制で再チャレンジすることになる。石黒会長との二人三脚体勢で経営することになると思うが、成功の可否は石黒会長がバトンを手渡したプロパー社長の力にかかっている。(鈎)
プロフィール
山田 隆司
(やまだ たかし)1955年10月31日、東京都生まれ。79年3月、東京理科大学工学部卒業後、同年4月に日本ビジネスコンピューター(JBCC)入社。05年、取締役常務執行役員東日本ソリューション事業部長に就任し、06年に代表取締役社長。08年、JBアドバンスト・テクノロジー社長。09年、JBCCホールディングス取締役専務執行役員。10年4月1日、代表取締役社長に就任。
会社紹介
JBCCホールディングスは、SIerの日本ビジネスコンピューター(JBCC)やディストリビュータのイグアスなど、14社のITベンダーを事業子会社として抱える純粋持ち株会社。日本IBM製品の販売に強く、全国に事業所を約80拠点保有するほか、大連市などにも子会社を保有し、中国市場でもビジネス展開する。