ネットマークスは2010年4月、副社長の佐藤宏氏が社長に就任する人事を発表した。佐藤氏のコンセプトは「人」。社員の能力を優れていると評価しており、その能力をさらに引き出すために「組織力」が重要と判断した。新組織の設置など、ネットマークスは今後どのような姿に変貌するのだろうか。
「メリハリをつける」組織を設置
──副社長から社長に昇格したわけですが、トップに就任したての感想はいかがですか。
佐藤 私自身が社長に適任かどうかは別にして(笑)、当社を成長に導くために今まで以上に知恵を搾り出さなければならないと実感しています。だからといって、奇抜なことをやろうとは思っていません。従来やってきたことに「メリハリをつける」ことに取り組みます。
──どこに「メリハリをつける」のですか。
佐藤 それは、これから徐々に進めていきますが、社長就任の内示を受けてから改めて実施したのは、同業やお客さんの経営者と面談する機会を増やすことでした。経営手法は何千種類もあるわけではないのに、それぞれの経営者によって企業経営の仕方が異なる。成長している企業と成長していない企業の何がどう違うのか──。それは、ちょっとしたことだと思うんです。企業ごとに風土や文化などが異なるので、「あの企業の経営者が行っていることは当社にぴったりだ」ということにはなりませんが、さまざまな経営者の話を聞くと、本当に勉強になります。自分だけの考えではなく、他人の話を聞いて自社のビジネスにつなげる。今は、それをポイントに成長路線を敷こうと考えています。
──となると、ネットマークスの長所や短所を踏まえ、近く成長戦略を立てるというわけですね。
佐藤 そうなりますね。実は、当社の長所を生かすために、若干の組織変更を行いました。それは、個人の能力を最大限に引き出すために、組織を有効活用する仕組みです。4月1日付で、「システムソリューション部」という部署を設置しました。
──どのような部署なのですか。
佐藤 その名の通り、ソリューションを提供していくことになる組織ですが、新しいソリューションを創造していくために、ほかの部署との連携を活発化していくことを目的としています。最近は、コミュニケーションを向上する手法の一つとして、“ファシリテーション”という言葉が使われますが、システムソリューション部のメンバーは、まさに“ファシリテータ(意見のまとめ役)”と位置づけています。
当社の優れているところは、営業的な側面でいえば、お客さんに恵まれているということです。各業界でトップ5社以内に入る企業を顧客として獲得している。それは、当社には優れた営業担当者が多いからだと自負しています。
ただ、一方で組織を最大限に活用していない。極端な話ですが、優れた営業担当者は自分の能力だけを信じて案件を獲ろうとしている。個人をバックアップする組織に頼ろうとしないのです。別の意味でいえば、組織をどう活用するかを意識していないというのは、個人のスキルを最大限に生かす組織がないということにもつながります。そこで、個人のスキルと組織をうまく調和させるような体制が必要だと考えました。
お客さんの潜在的なニーズを掘り起こし、企業として各社員の能力を最大限に発揮させるには、ピラミッド構造の組織だけでなく、それぞれの組織を横断的にみることも必要になってきます。システムソリューション部を設置したことで、縦と横で展開する。しかも、独立した組織にしていますので、お客さんの要望を応えながら社員の能力を最大限に発揮させることができる。
──システムソリューション部の設置による各部署の連携というメリットがある半面、それぞれの部署が組織として機能しない危険性はないのですか。
佐藤 組織の新設や再編は、会社にとってメリットになる一方で、リスクを伴うのは仕方がないことです。しかし、当社の場合は、各社員の能力を最大限に生かすことが成長につながると確信しています。しかも、時代の流れに応じた組織をつくらなければ、何も変わらない。組織力や統合力で、いかに個人能力を発揮できるか。新しいソリューションを創造するために、社内でコーディネートするような部署を設置する。当社の短所を補い、なおかつ他社との差異化を図るソリューションを提供できるようになる。そう信じています。
個人のスキルを最大限に生かす。
個人のスキルと組織をうまく調和させるような体制が必要だ。
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