「インタークラウド」でDC連携へ
──力を注いでいく事業領域はどこですか。
佐藤 ベースになるのは、「UC(ユニファイドコミュニケーション」「DC(データセンター)」「仮想化」「セキュリティ」などの当社が得意とする事業領域ですが、話題になっている「クラウド」に関しては念頭に置かなければならないと考えています。
クラウドという言葉自体は最近の流行かもしれませんが、技術的には以前と大きく変化しているわけではない。既存のリソースを有効利用したいというニーズが高まっているからこそ、ブームになっていると捉えています。しかも、当社が取り組んできたビジネスに適合している。当社がクラウド・サービスを提供するのではなく、あくまでクラウド・サービスを提供する事業者に対してインフラを構築してきたという意味合いです。例を挙げれば「仮想化」です。仮想化環境の構築は今までと変わらない。
また、ネットワークインフラを構築できるインテグレータは、DC事業者がクラウド・サービスを提供できるようにする“イネーブラー(可能にする者/黒子)”との見方が強まってきています。実際、当社では(親会社の)日本ユニシスがPaaSを提供していくうえでのインフラ構築に寄与している。
──ネットワークインフラを構築できるインテグレータにとっては、ビジネスチャンスが広がっているということですか。
佐藤 その通りです。例えば、インフラ構築側がSLA(サービス・レベル・アグリーメント)を定義するコンサルティングが有望株です。当社では、4月1日からサービス化しました。
また、クラウド・サービスが乱立するのを防ぐため、さまざまなDCのインタークラウド(互換性)を目指す取り組みも模索しています。当社がインフラを構築したDCを対象に、中立的な立場でインフラやアプリケーションの連携を提案していくのです。DCに対して、どのように訴えていくかは現段階で模索中ですが、その一つとしてコンソーシアムの設立などを検討しています。
──リーマン・ショック以降の大不況で、2009年は厳しかったという声をよく聞きました。今後の市場については、どのような見解をもっていますか。
佐藤 確かに、当社も09年度(10年3月期)は厳しい状況だったのは否めません。通期見通しは、利益がマイナスですので、決して胸を張ることができる業績ではない。ただ、徐々にですが、お客さんには設備投資に関する意欲が出てきた感触がありますし、今後は、厳しいながらも市場環境がもち直すのではないかとみています。
──御社の業績も伸びるということですね。
佐藤 まだ、昨年度の決算や今年度の業績見通しを発表していませんので、具体的な数値に関しては勘弁してもらえますか。ただ、今年度は昨年度と比べれば伸びることは間違いない。市場環境の明るい兆しに加え、社内の組織変更による効果が出てきますから。
眼光紙背 ~取材を終えて~
開口一番、「私が社長に適任かどうか…」と少し照れながら話を始めたが、長年にわたってネットマークスで多くの事業に携わり、組織や各社員の長所や短所を熟知していることをもってしても、佐藤宏氏こそが社長に適している人物といえそうだ。
ここ数年、ネットマークスは赤字が続くなど厳しい状況が続く。だからといって、抜本的な組織再編などを行ったところで、社員の能力を引き出すことにはつながらないと判断している。「奇抜なことはやらない」。意味がないからだ。しかも、従来のビジネススタイルに「メリハリをつける」のが“佐藤流”。
最も印象に残った言葉は、「多くの人の話を聞く」ということ。さまざまな経営者の手法を勉強して、自身の手法に吸収する。また、「人脈は自分自身で作らなければならない」。人を大切にする結果が、同社に欠けている「組織力」の強化に結びつくはずだ。(郁)
プロフィール
佐藤 宏
1951年9月26日生まれ。長崎県島原市出身。75年3月、九州大学法学部法律学科卒業後、同年4月、住友電気工業に入社。97年4月、ネットマークスで取締役執行役員や取締役常務執行役員などを経て、06年3月に日本テレコムネットワークシステムズ取締役。07年7月、ネットマークスの代表取締役副社長。10年4月、代表取締役社長に就任する。
会社紹介
大手ネットワーク系インテグレータのネットマークスは2007年6月、日本ユニシスの傘下となった。以来、日本ユニシスをはじめグループ会社のユニアデックスとの連携でビジネスを手がけてきた。現段階では、09年度(10年3月期)見通しが売上高で248億円(前年度比18.5%減)、営業損失8億円、経常損失8億7000万円、最終損失9億2000万円と厳しい状況が続くが、10年度で挽回を図る方針だ。