セキュアソフトは2002年に韓国のセキュリティ製品を日本で販売するために設立された。IPS(不正侵入防御製品)やメールセキュリティ製品、セキュリティ監視サービスを手掛け、右肩上がりの成長を続けている。姜社長に日本でのビジネスの軌跡と今後の方向性について聞いた。
日本市場、投資続け黒字転換
──セキュアソフトは、02年8月に日本で設立したそうですね。
姜 韓国で開発したセキュリティ製品を販売するための会社として設立しました。韓国には関連会社をもっています。02年に、国内に向けて早期にUTM(統合脅威管理)アプライアンスを市場に投入し、その後、製品ポートフォリオを増やして、IPS(不正侵入防御製品)「SecureSoft Sniper IPS」、メールセキュリティアプライアンス「SecureSoft Spam Hunter」を中心に取り扱っています。現在、韓国と日本で5000社の顧客を抱えています。また、セキュリティ機器の運用監視を請け負う「Security O.K Service」を韓国の最大手通信事業者SKテレコムとの協業で開始しました。
もう一つ、「エコソリューション」と呼んでいるのですが、古くなったネットワーク製品やサーバーを当社が買い取り、データを完全消去して初期化したうえで、ワールドワイドで販売しています。顧客がセキュリティ製品をリプレースする場合、既存製品を廃棄しなければならないケースが多いですよね。これはビジネスというより、お客様が当社を信頼して製品を導入してもらえるようにするためのサービスとして提供しています。
──韓国では高速インターネットインフラが発達しています。韓国でもビジネスを展開しているとのことですが、なぜ日本でも会社を設立されたのですか。
姜 セキュリティ製品を取り扱う韓国マークエニーの海外事業室長として、日本と米国のビジネスを担当させていただきました。そのなかで、日本は経済規模が大きく、品質へのこだわりも世界トップクラスですから、日本市場に受け入れられれば世界中どこでも通用すると判断して、日本でビジネスを開始しました。
──日本は韓国や世界の国々と比べると、相当勝手が違うと思います。
姜 よくいわれるのは「品質」ですね。韓国と米国の場合は、最初の品質水準で100%は要求していない。まず70~80%くらいでも市場で許容され、顧客がそれを買い取って、その後バグやら不具合やらをつぶしていって100%に高めていくんですね。ところが日本の場合は、最初から100%を要求しているわけです。そして、国内企業に導入した「前例(実績)」や「ブランド」を要求します。私が日本でビジネスをスタートして驚いたのは、国産セキュリティ商品を開発するメーカーがほとんどなかったことでした。私が好きな戦国武将の織田信長を引き合いに出すと、彼は次から次に新しいモノを取り入れて、新しい文化をつくっていきました。でも日本の企業は自社のビジネスへの影響を気にして、製品の検討、評価、導入に長い月日をかけて慎重に吟味します。それが一概に悪いわけではありませんが、織田信長のような革新的なチャレンジを行う会社は少ない。
そういう革新を起こそうとしている日本のベンチャー企業は、一つの案件に長い時間をかけて、その間に体力を失っていきます。当社も韓国でビジネスを展開せずに、日本だけに絞っていたら、もしかすると会社がなくなっていたかもしれない。
当社は韓国に関連会社があり、そのキャッシュフローを日本に投資し続け、直近4年間連続黒字の下地をつくることができました。ですが、最初の4年間はかなり大変でしたね。日本市場に合う商品をつくるために投資した金額は数億円に上ります。
投資を続けて高めてきた製品性能・品質といいパートナー、
この二つがうまく噛み合ったから成長につながった。
このバランスが悪ければビジネスは成り立たなかった。
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