Special Issue

<セキュリティソリューション特集>再認識されるPCセキュリティの重要性

2010/06/03 19:55

週刊BCN 2010年05月31日vol.1335掲載

 ユーザー企業の間で、PCなどクライアント端末に対するセキュリティの重要性が再認識されている。システム管理者の業務効率化や仮想化環境を踏まえたPC自体のウイルス対策、文書管理の強化などといった課題を解決したいという意識が高まってきているのだ。ノートPCなどモバイル機器の活用が広がっているなか、セキュリティを強固なものにしなければならないと考えられるようになった。そのため、セキュリティベンダー各社は新しい製品やサービスの提供で、ユーザー企業のニーズに対応。セキュリティ需要の掘り起こしに力を注いでいる。

仮想化環境に備えた取り組みも

 リーマン・ショックに端を発した大不況の影響が降りかかり、2009年の国内セキュリティ市場は厳しい状況だった。IDC Japanが今年1月に実施した国内企業817社を対象とした「情報セキュリティ対策の実態調査」では、前年と比べた今年の情報セキュリティ関連投資に対する増減率見込みについて、「減少する」と回答した企業が全体の20.3%を占めており、「増加する」と回答した企業の9.0%を大きく上回る結果になったのだ。

 ただ、前年の08年時点の調査では「増加」とする回答が7.9%、「減少」とした回答が22.4%であったことを勘案すれば、情報セキュリティ投資は減少傾向ではあるものの、抑制の気運は軟化傾向にあるとの見方をIDC Japanでは示している。

 つまり、セキュリティに関して、ユーザー企業は少なからず必要性を意識し始めているということだ。アンチウイルスやファイアウォール/VPNなど、外部脅威への対策の導入が進んでいるほか、アイデンティティ/アクセス管理、セキュアコンテンツ管理で対策を練ることに関心が高まっている傾向がみえる。脅威に対する対策をはじめとして、クライアントやシステムの「管理」というキーワードが再び注目を集めているわけだ。

 こうした背景があり、セキュリティベンダー各社は自らのビジネスの強化を図っている。アンチウイルスやアンチスパムなど脅威管理に関してはサービス型モデルが相次いで登場してきているのは、その現れの一つだ。また、クライアント管理という観点では、リモートで管理や操作が行えるソフトが登場した。ドキュメントに関してもPDFなどを使って管理するといった使い勝手の良さを追求した製品が発売されている。ユーザー企業に投資意欲がみられるようになり、セキュリティの需要が高まる傾向が顕著になってきている。

キヤノンITソリューションズ
“日本品質”で低価格を実現
ISP、DCに拡販でシェア拡大狙う

 セキュアソフトの「SecureSoft SpamHunter」は日本と韓国を中心に累計3000社の導入実績をもっている。

 キヤノンITソリューションズが、この「SecureSoft SpamHunter」の販売を開始したのは2009年の第1四半期からだが、すでに50~60社への導入を果たしている。SpamHunterは、安価でありながら、99.1%という高い検知率を誇る。また、ハードウェアの障害時に電子メールが滞留して業務が停止するのを防ぐ機能を併せ持っている。キヤノンITソリューションズ セキュリティソリューション事業部新規プロダクト推進部の岡庭素之部長は「とくに、複数のログを1画面で視覚的に見せるダッシュボードを提供し、IT管理者の手間を削減できるようにしたことが、このソリューションが選ばれる一番の理由です」と説明する。

 市場では仮想化技術を利用して、SaaS/クラウドなど、サービス化の流れがすう勢となっている。SpamHunterは複数のドメインを1台で管理できる「マルチドメイン対応」である。この機能を前面に打ち出して、ISPやデータセンターといったサービス事業者、企業グループのシステムを一元的に運用・管理する情報システム子会社に対して、SpamHunterを「サービス」としてエンドユーザーに提供するビジネスモデルを提案する。仮想化環境では「Virtual Appliance」版の提供も計画している。

 一般的に、海外製品は価格が安いことと引き替えに品質面やサポート対応が不備だとみなされ、顧客の選択肢からはずされるケースが多い。キヤノンITソリューションズとセキュアソフトは、緊密に連絡を取り合い、市場ニーズのフィードバックとキヤノンITソリューションズのノウハウを製品に組み込み、3回の品質検証を通して「日本品質」でありながら、低価格を実現している。セキュアソフトの姜昇旭社長は「迅速なサポート対応が認められ、日本国内の大手ISP、データセンター7社に製品を納入しました。顧客からは追加注文の話も頻繁にくるようになりました」と自信を示す。

 国内でアンチスパム製品市場が盛り上がったのは05~06年のことだ。今年は当時導入された製品のリプレース時期に相当することから、「SpamHunter 3大特典キャンペーン」を開始した。アンチスパム製品のリースアップを迎える企業や、使っている他社製品からの乗り換えを検討している企業に対し、乗り換えを促し、一気にシェア拡大を図る方針だ。キャンペーンでは、評価機貸出しによる事前検証利用を経て期間中に購入した場合に本体を特価で提供するほか、他社製品からの乗り換えでは保守の残期間分最長1年間を上限にSpamHunterの保守を無償延長する。また、本体と、次年度保守3年パック、4年パックのように、保守契約を複数年まとめて購入した場合、通常価格の50%OFFで提供する。岡庭部長は「事前評価で好評を得て、成約につながるケースが非常に高い製品です。なので、まずは使っていただいて性能、品質の高さを評価してもらいたいですね」とアピールしている。

キヤノンITソリューションズの岡庭素之部長(左)と韓国・セキュアソフトの姜昇旭社長


キヤノンITソリューションズ=http://www.canon-its.co.jp/
  • 1

関連記事

キヤノンITソリューションズ サービスビジネス拡大へ

<キヤノンITソリューションズ特集>電子メールの誤送信対策システム 配送に時差をつけ、気づく範囲を広げて誤送信を防止

<セキュリティソリューション特集>PCやサーバーの「管理」にニーズ高まる

<セキュリティソリューション特集>情報漏えいなど、増え続ける脅威への対策必須