パートナーと製品品質で事業拡大
──4年連続赤字を続いていた、と。それが黒字に転換するきっかけは?
姜 それは投資を続けて高めてきた製品性能・品質と、市場に対して安全なe-worldを提供するという同じ理念をもつパートナー、この二つがうまく噛み合った結果であって、このバランスが悪ければ成長には結びつかなかったでしょう。昨年は売上高が43%増でしたから、その意味でもパートナービジネスが高い効果を上げています。
──御社は大手のSIerをパートナーにされていますね。パートナービジネスを成功させるうえで、とくに取り組んでいることは何ですか。
姜 そうですね。キヤノンITソリューションズ、日立電子サービス、富士通、NTTデータカスタマサービスなど、さまざまな会社にお声がけし、製品を販売していただいています。当社は後発のメーカーですから、とにかくパートナーが一番販売しやすい環境をつくってあげることが重要だと考えています。IPSもサービスやメールセキュリティ製品も、今や市場に溢れていますから、当社のパートナーのほとんどは競合他社の商材も取り扱っています。そのなかで当社にできることは、パートナーにしっかりとしたサポートと他社を上回る利益を提供すること。九州でも大阪でも、当社の営業担当者とエンジニアが必要な時にはどこにでも同行します。費用は当社持ちです。それに、機能やサポートなどについて、パートナーから要求があれば可能な限り対応します。それをもってパートナーとの信頼関係ができますし、どんな風が吹いても乗り切ることができると考えています。パートナーによって取扱高はまちまちですが、売り上げがどうこうではなく、根幹にあるのはすべて人と人との信頼関係です。
当社は、韓国にある研究所と日本のパートナーとが共同で検討しながら製品開発を進めています。直近ではクラウド、仮想化の盛り上がっていることから、「SecureSoft Spam Hunter」を仮想アプライアンス化しました。「SecureSoft Sniper IPS」も近いうちに対応します。仮想環境はVMwareだけではありませんから、他の環境にも搭載できるようソフトウェアパッケージ化して、すぐに導入できるよう製品を強化します。
──次は秋に米国への本格進出を控えていますね。
姜 今年10月にロサンゼルスに支社を設立する予定です。なぜ今、米国進出かと問われれば、会社は生き物だからということでしょう。人間にもさまざまな人生の岐路があるわけですが、今ここで進出することが、セキュアソフトが安定的に成長するための絶好のタイミングとみています。グローバルビジネスを展開しようとするうえでは必要な手続きです。米国は、日本よりはるかにスケールの大きい流通販売が必要になります。ロサンゼルスからワシントンまで飛行機で6~7時間と、国内移動なのに相当な時間がかかる。米国でビジネスを展開するには全米のネットワークを確立している販社としっかり組まないと成功しません。当社はエコソリューションを行っていますが、そのソリューションを米国で一緒に展開している販社と協業したり、既存の日系企業のパートナーの現地法人とも協力していくことで、話が進んでいます。
──米国ビジネスが軌道に乗ったら、もっと大きな成長の糧を得られそうですね。その場合にはビジネスの軸を日本、米国のどちらに置きますか。
姜 2014年に日米で50億円の売上高目標を掲げ、JASDAQに上場することを目標にしています。これからも日本を軸に、パートナーとの信頼関係を深めていきたいですね。
眼光紙背 ~取材を終えて~
「えーっ、ほんまぁ?」。時に関西弁も交えて明るく気さくに話す姜社長。いまは米国ビジネス立ち上げのため、韓国、日本、米国を行き来する多忙な日々を送っている。日本でビジネスを始めるきっかけをつくってくれたのはご両親。仕事の関係なのか、実家には日本からの来訪者が多かったという。親御さんの後押しを受けて日本に留学し、それを機に日本で会社を設立した。
セキュアソフトが挑むIPSやメールセキュリティ対策市場、セキュリティ監視サービスには、外資系メーカーの強豪も多い。そんななかで、日本のパートナー、韓国の開発会社との“三人四脚”でシェア拡大を図っている。高い品質と、安価な製品により、昨年、不況にもかかわらず売上高43%増を実現。今年、気持ちも新たに、競争の場を米国に広げる。「米国のセキュリティメーカーと競争できる自信をもっている。彼らの市場で直接ぶつかってみたい」と姜社長は力強く語った。(環)
プロフィール
姜 昇旭
(カン スンウク)1970年、韓国忠清南道の大田広域市生まれ。99年、東京大学工学部修士課程修了、同年セキュリティ製品を手がける韓国マークエニーに入社。海外事業室長に就任。2000年、マークエニー副社長に就任。01年、マークエニー・ジャパン立ち上げに当たり、日本法人代表取締役社長に就任。02年、セキュアソフト設立、代表取締役社長に就任。2008年からは韓国MTXの代表取締役を兼務。
会社紹介
2002年8月に設立。韓国で開発したセキュリティ製品を日本向けに販売開始。日本市場で早期にUTM(統合脅威管理)アプライアンスを投入後、IPS製品「SecureSoft Sniper IPS」、メールセキュリティアプライアンス「SecureSoft SpamHunter」の発売を開始。会社設立当初から主要SIerをパートナーとして開拓し、国内シェアを伸ばす。またセキュリティ監視サービス「Security O.K Service」にも力を注ぐ。