JFEシステムズは、兄弟会社のエクサからJFEスチールグループ向けのSI事業を、2011年4月をめどに譲り受ける。旧川崎製鉄と旧日本鋼管が経営統合して8年。ようやく情報システム子会社の事業の一部が統合することになる。今年6月にトップに就いた菊川裕幸社長は、「鉄鋼向けシステムで培ったノウハウや経験を結集する」と、両社の力を合わせることによるビジネス拡大に強い意欲を示す。
鉄鋼SI、ようやく一つに
──エクサからJFEスチールグループ向けのSI事業を譲り受けますね。
菊川 旧川崎製鉄と旧日本鋼管が経営統合してJFEグループになったわけですが、それぞれの情報システム子会社は、統合しないまま現在に至っています。旧日本鋼管の情報システム子会社だったエクサは、主要株主の一社である日本IBMとの関係もあって、交渉に時間がかかったことは否めません。2011年4月をめどにようやく事業の一部統合に向かって動き始めました。JFEグループ向けのアプリケーション開発や維持管理などは“やっぱり一つにまとめたほうがいい”との合意が、JFEスチールと日本IBM、われわれ事業会社2社の計4社でなされたわけです。ただし、エクサが担当するJFEスチールグループ向けのシステム運用については、従来通りエクサと日本IBMが請け負います。
──グループ鉄鋼向け事業のエクサとの一部統合で、どれくらいの効果を見込んでおられますか。
菊川 2011年度(12年3月期)に売上高ベースで約70億円の上乗せを期待しています。同年度の現JFEシステムズのみの連結売上高の計画値が約300億円ですので、合計370億円ほどの増収が見込まれる。人員ベースでは、エクサから300人ほどが移り、直近の当社連結社員数の約1530人と合計して、1900人規模のグループ社員数になる予定です。
JFEスチールグループ向けのビジネスを巡っては、2002年の旧川崎製鉄と旧日本鋼管の合併に伴い、旧両グループの情報システムを統合する「J-Smile」のプロジェクトを、JFEシステムズとエクサが中心となって手がけています。IBMのメインフレーム「System z」上で、ユーザー自らの手によるオープンな巨大システムを、およそ3年の期間で再構築した実績をもっています。
──統合システム「J-Smile」のプロジェクトでは、エクサとある意味“同じ釜の飯を食った”わけですね。
菊川 そうなんですよ。私は今年6月にJFEシステムズの社長を拝命したわけですが、それまではJFEスチールのシステム主監をしていました。なので、JFEシステムズとエクサの、少なくともJ-Smileプロジェクトに参加したメンバーは、よく知った仲なんです。今度、新しくJFEシステムズに加わる約300人のエクサのメンバーは、馴染みの顔も多い。もともとが兄弟会社なので、当たり前といえば当たり前。今回、鉄鋼向けの一部しか統合できないのは、個人的には少し残念でもあります。
──JFEシステムズのトップに就いて3か月になりますが、どうですか。業績的には連結売上高が300億円を切ってしまい、厳しい状況です。
菊川 2004年3月期には、連結売上高が364億円に達していましたが、システム統合が落ち着き、JFEスチール向けの売り上げが漸減。JFEシステムズの独自ビジネスを伸ばしてきたものの、リーマン・ショックの大波をかぶり、直近の決算では徹底した経費節減によって“なんとか赤字にならずにすんだ”という状態です。ただ、実際にJFEシステムズの内部に来て分かったことなのですが、SIerとしての実力は、私の予想を大きく上回っています。得意分野を複数もち、特定分野では誰にも負けないオンリーワンの戦略をうまく展開。JFEスチールからみたJFEシステムズと、情報サービス産業のなかにおけるJFEシステムズのポジションとは、やはり違っていて、これまでは片面しかみていなかった。
専門領域で強みを生かし、グローバルで活躍する
特化型SIerグループのトップを目指す。
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