47都道府県に販売会社があったリコーのグループ体制が、数年をかけて、2010年7月に「リコージャパン」1社に統合された。コピー/プリンタの販売方法や顧客の購買行動が変わり、「全国均一」の販売体制を求め続けた結果だ。初代社長の畠中健二社長は「モノ+コト売り」を徹底し、新しい領域であるMDS(マネージド・ドキュメント・サービス)の全国への波及も目指す方針だ。
統合しても「地域密着型」は譲れない
──2010年7月、リコーの販売事業本部と販売会社の機能が統合され、日本全国1社の販売会社として「リコージャパン」が設立されました。この数年の間に県別単位の販売会社を徐々に集約したのは、販売環境の変化に応じた施策なのでしょうか。
畠中 もともとリコーの強みは、「地場密着型」であることです。そのことが、これまで「県別販社体制」を敷いてきた理由で、地域の特性を生かしながら活動してきました。顧客の購買行動が地場ごとの色彩をもっていた時代は従来のかたちでいいのですが、近年、大手企業を中心に本社/本部の一括型・集約型の購買に変わってきました。「県別販社体制」で大手企業の出先を当社が攻める際、その企業の本社の意向が反映されるようになり、当社の内部でも、顧客ニーズに応えることが難しくなってきました。
──従来の体制では、リコーグループ内で連携がとりにくい状況があったということですか。
畠中 情報の壁がありました。同じリコーグループのなかでも、不思議なもので、どうしても情報の壁が会社ごとに生じてしまう。各販売会社は、自分のやり方に満足している面がある。会社ごとにプライドをもって販売活動を展開するのは結構なことですが、販売会社と本社が別々に行動してしまう。とくに、大手企業に対する戦略の打ち方が、いままでのフレームワークでは通用しない。また、当社の課題として、個別最適と全体最適の使い分けが必要になっていました。個々の販売会社の特徴が生かされ過ぎると、全体最適がおろそかになりがちな面が出てきます。
──主に、顧客の購買行動に要因があり、そのために販売会社を一つに統合したわけですね。
畠中 それと、リコーグループはいま、これまでの画像基盤事業から新しい事業領域に拡大することを大方針として掲げています。そうした新しい事業領域へ一気に乗り出す時は、全体最適で推進しなければなりません。一つの思い、一つの戦略、一つの仕組みで、全国一斉に取り組まなければならないという課題が出てきた。これも、全国の販売会社を1社に統合した大きな理由です。
──その措置によって、各拠点の役割は、どう変わりますか。とくに、地域の中小企業へのアプローチが弱まるのではないでしょうか。
畠中 「個別最適」と「全体最適」の言葉を変えて、私なりに、「固定」と「変動」といっています。固定とは、全国均一にやることは同じクオリティでやるということ。変動は地域で個別にやるべきことを、いままで通り個々にやるということです。その変動の機能を担う拠点を「支社」として残しています。これが以前の「販売会社」に当たります。価格を決裁する部分は、支社に権限があり、従来とまったく変えていません。パートナーの販売店に対する特別価格の設定などは、地域に応じて自由に決めています。固定と変動の使い分けのさじ加減が、当社のマネジメントの肝になります。
──これらを踏まえ、リコージャパンが成長していくうえで、どんなことが課題だと捉えておられますか。
畠中 先に触れた通り、新しい事業領域にガンガン乗り出していくことが最大の課題です。それから、もう一つは、販売会社を1社に集約したことで、ムリやムラがものすごく明らかになってきました。これを徹底的に合理化しなければならない。別々の会社の時代にはみえなかった問題が、一緒になったことでパッとみえてきたんです。組織の不思議なところですね。
──であれば、支社の持ち分のエリアを変えてしまうというのはどうでしょうか。
畠中 問題はエリアを変えるということもありますし、担当の量を増やしたり、減らしたり、ある一定の基準に従って割り振る必要があります。例えば営業車ですが、ある営業所は一人に対して1台以上が割り当てられている。これにはびっくりしました。無管理状態の増車がなされていたということです。
[次のページ]