SMBと製造業の新市場を開拓
――F5は、通信事業者や金融機関などのハイエンド市場を得意としておられる。しかし、このところシスコシステムズが小規模企業市場の開拓を推し進めるなど、もともとハイエンドに強い大手外資系メーカーが中小企業(SMB)に着目している印象があります。
アリイ F5は、SMBから大手まで、あらゆる規模の企業のニーズに対応した製品をもっています。しかし、売上構成からみれば、SMB市場にはまだ未開拓の部分があることは否定できません。そこで、ビジネスを拡大するために、これから、SMBを相手にした事業を広げる必要があると考えています。
もちろん、通信や金融をはじめとした大手企業向けの展開を、引き続き注力して伸ばしていきます。それと同時に、販売パートナーと綿密に連携をとって、新しい市場の開拓に力を入れていきたい。その新規市場の一つがSBMであり、もう一つが製造業です。
――製造業は海外進出が進んでいるので、データ分散などに関するニーズが高いということですか。
アリイ そうです。最近、製造業のお客様で、当社とグローバルの契約を締結する企業が増えています。グローバルの契約では、われわれ日本法人が機器を提供して、F5が各国にもつ拠点が現地でサポートを行います。このように、製造業は引き合いが好調なので、今後、開拓に注力していきたい。
――新規市場を開拓するにあたって、パートナー戦略の見直しが必要になりますね。
アリイ 販売パートナーを変えたり、大きく増やしたりするという意味での見直しは必要ないとみています。新しく当社のパートナーになってくれる企業はいつでも歓迎しますが、基本的には、既存パートナーの支援を強化することがカギを握っていると考えています。販売パートナーは、それぞれの得意分野があるので、SMB市場に強いなど、各社の得意分野に合わせて、パートナー別の事業プランを立てていきます。
――御社とネットアップとVMwareの3社が、合同セミナーを開催しています。その狙いを教えてください。
アリイ 冒頭申し上げたように、仮想化がIT市場の重要なキーワードになっています。ストレージが主力商材のネットアップと、仮想化用のソフトウェアを提供するVMwareとともにセミナーを開いて、意見交換ができる場を設けることによって、今後、どういう組み合わせで仮想化ソリューションを実現できるかを、3社で一緒に探ります。近々、各社の商売につながる効果がみえてくることに期待しています。
――アリイ社長が挑戦される売上目標については、いかがでしょうか。
アリイ F5は全世界で、アグレッシブに事業を拡大することに取り組んでいます。日本もそうですが、事業拡大は、単にネットワーク機器を販売するという箱売りではなく、パートナーと連携してソリューションとして展開することがポイントになります。
日本では、3年後をめどに、いかにして事業を伸ばすかを検討しているところです。本音をいえば、売り上げの倍増を実現したいのですが、難しい部分があるかもしれません。とにかく、この2、3年で、事業を急拡大していきたいと強く思っています。
・お気に入りのビジネスツール アリイ社長が併用している2台のスマートフォン。リサーチ・イン・モーションのBlackberryとアップルのiPhoneだ。Blackberryはメールが打ちやすいということで、主にビジネスに活用しているそうだ。一方、「iPhoneは家族で写真やビデオを楽しんだり、プライベートで使うことが多い」と、用途に応じて2台を使い分けている。
眼光紙背 ~取材を終えて~
「お気に入りのビジネスツール」として、2台のスマートフォンを披露してくれたアリイ社長。スマートフォンでソーシャルメディアを利用するのが好きだそうだ。このところ、ソーシャルメディアの利用者が急増して、ビデオや音声によるネットワークのトラフィックが爆発的に増えている。ネットワーク機器メーカーのF5にとって、大きな商機となる。アリイ社長は、自分も積極的なユーザーの一人でありながら、携帯端末とソーシャルメディアの利用者が増加していることを、F5の事業拡大につなげようとしている。
F5の社名は、台風や竜巻の強さを測る「Fスケール」の最強段階「F5」をとったもの。アリイ社長は、社名に沿ったかたちで、同社のネットワーク機器市場での力を最強レベルに引き上げること目指している。「厳しくかつ楽しく働く」をモットーに掲げているアリイ氏。このモットーを具体的なかたちにして、社内に強さを浸透させていく。(独)
プロフィール
(アリイ ヒロシ)アメリカで大学を卒業し、米国ホンダに入社。セールス・マーケティングやエンジニアリング、品質管理などを担当。その後、P&Oネドロイド社(現 A.P.モラー・マースク社)に入社。1998年にアジアパシフィック事業戦略部門責任者への就任を機に、日本に赴任。2000年に日本BEAシステムズ(現オラクル)に入社し、05年に同社代表取締役に就任。07年3月、ウィプロ・ジャパン代表取締役兼ウィプロ・リミテッド日本・中国代表に就任。2011年7月1日から現職。
会社紹介
2000年、ネットワーク機器メーカーの米・F5ネットワークスの日本法人として設立された。東京・赤坂に本社を構える。ロードバランサー(負荷分散装置)をはじめとしたネットワーク機器を、東京エレクトロン デバイスや三井情報などの販売代理店を通じて展開している。金融業や通信事業者といったハイエンド市場を得意とする。2007年、大阪市に西日本支社を設立した。