海外売上高比率を30%に、中国など新興国に照準
――中計では、海外事業の拡大を注力施策に掲げています。富士通フロンテックは、富士通グループのなかでも海外売上高比率が高いですが、今後はどの程度まで伸ばす考えですか?
利根 昨年度の実績についていえば、海外地域の連結売上高は206億円。全体に占める比率は19.7%でした。この比率を13年度には30%まで引き上げたい。13年度の全体の目標売上高は1700億円ですから、その時の海外事業は510億円になる計算です。現状の約2.5倍ですね。
――どの地域・国を狙いますか?
利根 昨年度の海外事業の売上高を国別でみると、トップが米国の88億円で、次いで中国の39億円、韓国の35億円となっています。米国が中心になりますが、期待を寄せているのは中国。この国での売り上げは、正確な時期はいえませんが、3~5年後に100億円規模にもっていきたいと考えています。
――拡販する製品・サービスは何になりますか?
利根 販売するものは、基本的には日本と同じですが、海外ではとくに「メカコンポーネントビジネス」という事業を強化していきます。
メカコンポーネントとは、ATMをつくるための部品で、当社は完成品も販売しながら、ATMメーカーに対してこれらの部品を販売するビジネスも、並行して進めています。海外市場では、その国のメーカーが強いケースがありますから、単純に正面から競い合うだけでなく、こうした部品の販売事業も手がけているわけです。
韓国では、韓国の地場メーカーと業務・資本提携を行って、メカコンポーネントを販売するビジネスに特化しました。国によっては、こうしたかたちで部品ビジネスに焦点を絞り、完成品は提供しないという選択肢もあると思っています。中国のほか、海外ではこうしたメカコンポーネントビジネスは、もっと伸ばすことができると感じています。
――インドについてはいかがですか?
利根 インドは、中国と並ぶ有望市場だとは思いますが、価格競争が他の新興国に比べて非常に激しい。どのようなビジネスが適しているか、慎重に見極めたいと思っています。
――中計の目標数値を達成するために必要な分野と、投資計画を教えてください。
利根 海外事業とともに伸ばしていくつもりのサービスビジネスで、設備の増強が必要と感じており、ここに投資します。また、次世代のハード開発を推進するための研究開発費用もかなりの額を投じる予定です。
――富士通やグループ会社も含めて、事業体制の見直しは考えていますか?
利根 09年に小売店舗向けのソリューション事業の販売、システム構築、運用サービス部門を富士通から移管し、製販一体の体制を確立しました。また、公共機関向けビジネス部門でも、地方の公営競技場向け端末機器などの販売事業を移しています。運用・保守会社の子会社化も進め、開発から保守までの一貫体制を構築することができています。ですので、大きな組織の見直しは終わっていると認識しています。
中期的な視点で、組織を強くするという意味では、若い人材をもっと採用して、育てていきたい。今年度も約30人の新卒を採用しましたが、今後も若い人材を積極的に受け入れて、彼らの力を活用していきたいと思っています。そのことが、組織の活性化には欠かせないと考えるからです。
・こだわりの鞄 2年ほど前、夫人とともに選んだ鞄。利根社長がビジネスバッグを選定するポイントは、A4サイズの資料が折り曲げずに入って、折りたたみ傘も収納できるスペースがあること。そして、軽いこと。パソコンは持ち歩かず、「必要最低限の物だけ持ち歩く」主義だ。
眼光紙背 ~取材を終えて~
本文でも触れたが、富士通フロンテックは、富士通グループのなかでも海外での売上高比率が高い企業だ。海外事業の拡大に強い意気込みを示す富士通の山本正已社長にとっては、期待に応えてくれる子会社に違いない。そのことも影響しているのか、富士通フロンテックが中期経営計画で示した海外事業の売上高計画は、かなり挑戦的なものだ。
特定の国・地域に依存するのではなく、ターゲットは全世界。北米、欧州、中国、インドといった市場規模が大きい、または急成長が予測できる国だけでなく、そのほかのアジア地域にも強い関心を寄せている。営業拠点としてだけでなく、コスト削減のための製造拠点としても海外に目を向けており、グローバル化を着々と進めている。利根社長は、「国内だけのビジネスにとどまっていては大きな伸びは期待できない」と断言した。富士通グループ屈指のグローバルカンパニーは、今以上に世界で存在感を示すことになるだろう。(鈎)
プロフィール
利根 廣貞
(とね ひろさだ)1951年1月26日生まれ、1973年4月、富士通に入社。04年6月、経営執行役。06年6月、富士通フロンテックの常務取締役に就任。07年4月、取締役経営執行役常務。10年6月、取締役経営執行役専務。11年6月24日、代表取締役社長に就任。
会社紹介
富士通フロンテックは1940年に設立された(当時の社名は金岩工作所)。主な事業内容は、ATMやPOS端末および関連システム、大型の映像表示システム、金融機関および流通業を中心とした情報システムの開発・販売。資本金は84億5750万円で、連結従業員は3639人(ともに11年3月末時点)。88年に東京証券取引所第二部に上場した。昨年度(11年3月期)の業績は、売上高が前年度比10%増の1046億1600万円、当期純利益が66.3%増の12億8200万円。