業績が減速傾向にある大手システムインテグレータ(SIer)の日本ユニシスは、生え抜きの新社長の下で、ビジネスの革新を断行している。7月1日付でトップに就いた黒川茂社長は、「スピードの向上」「ターゲットの拡大」をキーワードに掲げ、開発現場をよく知ることを強みに、日本ユニシスを再び成長路線に導こうとしている。黒川社長にその具体策を聞いた。
計画は必達、それがSE出身者のこだわり
――システムエンジニア(SE)としての経験が豊富な黒川社長は、日本ユニシスで初の生え抜きのトップとなりました。就任からのおよそ3か月、どのようなことに取り組んでこられましたか。
黒川 生え抜きといえば、実はこのインタビューの直前にも開発現場を訪れて、社員と会話を交わしてきました。
就任から3か月の間は、顧客企業やパートナー企業への挨拶回りを中心に行ってきました。それと並行して、売上高と営業利益の減少に歯止めをかけるべく、これから取り組まなければならないアクション項目を整理して、各アクション項目の担当も決めました。今年12月に、日本ユニシスの経営戦略を外部に発表することを予定しています。経営戦略の発表を踏まえて、来年1~3月に各部署の具体的な施策を固めたいと考えています。
――経営戦略は12月発表ということですが、それに先駆けて、戦略の柱となるものを少し示していただけないでしょうか。
黒川 当社は今、IT投資の動向やエネルギー供給問題などを含め、われわれを取り巻く市場環境を中期的に分析して、変化のポイントを整理することに取り組んでいるところです。金融業界をはじめとして、3~5年後に各マーケットがどういう立ち位置になるか。そして、ITに何が求められているのか。これらの観点に立って市場環境の変化を先読みすることによって、必ず新しいビジネスチャンスを見つけることができると確信しています。
国内のIT市場は今後、これまで以上にプレーヤー間の競争が激しさを増すのは間違いないでしょう。日本ユニシスがこの市場で勝ち抜いていくために、斬新なアイデアを出して、思い切った行動をとる必要があるとみています。仮説でもいいから、とりあえず市場環境を整理して、早期に仕込みを図りたい。
――従来型SIの大型案件が減るなかで、日本ユニシスは年々、売上高と営業利益が落ちています。その状況を脱する緊急対策として、黒川社長はどんな手を打とうとしておられますか。
黒川 今年度(2012年3月期)は、何よりも経営計画の達成にこだわりをもっています。計画を必達することは、SE出身の私にとってあたりまえのことであって、社長として最も重要視している項目です。日本ユニシスは、残念ながら、これまでなかなか経営計画を達成することができなかったのですが、来年度からの業績回復を目指して、今年度は売上高2500億円の計画値に到達することを必須条件としています。
日々、経営計画の達成の必要性を社員に向けて強く訴えています。達成の進捗状況についての定期レポートを経営層の報告事項に入れており、月単位で各部署の実績を把握します。そして、達成の進捗状況に基づいて、経営層の次の役員賞与の金額を決めます。
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