関西電力(関電)グループでシステム構築の事業を展開する関電システムソリューションズは、販売力の強化に力を入れている。新しいデータセンター(DC)を開設し、DCサービスをはじめとする統合的なIT商材を揃えてきた。今後の事業展開でのキーワードとなるのは、「スマートシティ」だ。関電グループの一員ならではの強みを生かして「SI」と「電力」を融合し、スマートシティ市場の開拓に取り組んでいく。
四本柱の体制で売り上げ400億円へ
──御社は昨年末、大阪市の中心部に最大1300ラックを収納する「第3データセンター」を新設されました。ユーザー企業のサーバーを預かるハウジングをはじめとして、各種DCサービスの事業拡大に力を入れておられます。新DCには、どのような手応えを感じていらっしゃいますか。
田村 開設前と比べて、当社のDCサービスへの問い合わせ件数が10倍にも増えています。問い合わせに対応するスタッフが足りないくらい、早くも多くのお客様から引き合いをいただいている状況です。東日本大震災をきっかけとして、企業の間にBCP(事業継続計画)やDR(災害発生時のシステム復旧)のニーズが高まっていることが、当社の実ビジネスにつながりつつあります。
新年度を迎えるにあたって、BCP関連の予算を大幅に引き上げる企業が多いようです。当社のお客様のなかには、関西地区の企業だけではなく、西日本にバックアップシステムをつくりたいという在京の大企業も少なくありません。「第3データセンター」は、エネルギー使用の効率化などによってサービス利用料を安価にし、価格競争で北海道や韓国・釜山などの料金が安いDCにも勝てると自負しています。ユーザーのDCニーズの高まりを追い風にして、DCサービスは非常に展開しやすい商材になっていると肌で感じています。
「第3データセンター」の建設計画を立案した当初は、サーバー用のラックスペースが7~8年で満杯になるというシナリオを描いていました。ところが、ここにきてDCの需要が予想外に活発になっているので、今はすでにその半分くらいの期間でスペースが埋まってしまうとみています。すぐに次のDC建設の検討に入るつもりです。
──DCサービスの事業拡大に取り組むのは、関電グループ以外への販売を強化するためと理解していいのでしょうか。
田村 当社はもともと関西電力(関電)本体とおよそ60社あるグループ会社に向けた事業展開が強みです。関電本体のシステム構築のほとんどは当社が手がけていて、売上構成では内販が約90%を占めています。しかし、継続的に売り上げを伸ばすためには、内販だけでは限界がみえてきたことは否めません。そんな状況にあって、私どもは関電本体とグループ会社の従来の柱に加えて、グループ外の販売(外販)とDCサービスの二つを強化し、四本柱の事業体制づくりを方針に掲げています。DCサービスは、一部は関電本体/グループ向けにも展開しますが、基本的には外販がメインになります。
外販を強化するために、上流コンサルティングの事業展開を推進しています。昨年、コンサルティングに携わる7人構成の専任組織を立ち上げました。早いうちにその人数を20人前後に増やしたいと考えています。当社は、コンサルティングのチームをつくり、「第3データセンター」を開設して、上流から下流までのITサービスを統合的に提供するための基盤を築いてきました。これをバックボーンとして案件の獲得に力を注ぎ、5年後をめどに、売り上げを現在の365億円(2011年度見込み)から400億円に伸ばしたい。
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