関西電力(関電)グループのシステムインテグレータ(SIer)である関電システムソリューションズ(田村和豊社長)は、2011年末に、延べ床面積1.2万m2規模の「第3データセンター」を大阪市の中心部に新設し、このほど、稼働を開始した。これにより、インフラ基盤となるDCサービスから上流工程のコンサルティングまで、ITサービスを統合的に提供する。(取材・文/ゼンフ ミシャ)
「第3データセンター」の開設は、関電システムソリューションズが掲げる成長戦略の中心的な取り組みの一つだ。同社は、売り上げの大半を占めている関電本体/グループ会社向けビジネスに加え、グループ外向け事業の拡大を目指している。その事業計画の一環として、サービス分野のポートフォリオを強化し、データセンター(DC)サービスからコンサルティングまでのフルサポートを展開している。
関電システムソリューションズは、1月に稼働を開始した「第3データセンター」をベースとして、今後、ユーザー企業のサーバーを預かるハウジングなどの各種DCサービスを、最新の設備をもって提供する。さらに、新DCを活用して、自社開発のクラウドサービスの展開に力を入れていく構えだ。
最大1300ラックを収納
9階建てで、1.2万m2の延べ床面積をもつ「第3データセンター」は、JR大阪駅/新大阪駅から車でおよそ10分の立地にある。1~4階にロビーや電源設備を設け、5~9階には、ハウジング用などのサーバールームを用意している。サーバールームは、最大1300ラックまでを収納することが可能だ。
東日本大震災以後、企業はBCP(事業継続計画)に本腰を入れて取り組んでいる。ITサービス事業本部ITサービスインフラ構築部ファシリティグループの樋口雅之チーフマネジャーは、「当社には『第3データセンター』を利用するハウジングサービスへの問い合わせが殺到している」と手応えを感じている。
「第3データセンター」は、BCPの需要拡大や電力供給の不足を受けて、「安全性」と「省電力」の二つを、スペース提案のキーワードに掲げている。まず、大地震の発生に備えて、ビルの免震設備を整えた。建物の下に積層ゴムアイソレーターや鋼材ダンパー、油圧式ダンパーを備え、地震発生時に揺れを抑制する。さらに、監視ルームのスタッフは、24時間365日、サーバー室でシステムの稼働状況を監視し、地震関連情報が入ったら、迅速にシステムの安全対策を実行する。
「第3データセンター」は、震災発生時だけではなく、日頃のセキュリティも強化している。生体認証によるサーバールームの入退館チェックを行うセキュリティシステムを用い、ユーザー企業の関係者以外の人間はサーバールームに入室できない仕組みになっている。
CO2排出量を約44%削減
また、「省電力」対策では、外気温が低いときに外気を利用して機器の発熱を廃熱にする冷房システムを採用するなど、エネルギーの効率的な使用を図っている。外気冷房に加え、室内空調機から戻ってくる水が熱源機に入る前に冷却塔で予冷して、熱源機の負荷を軽減する「フリークーリング」や、「キャッピング」による電力消費削減を実現している。キャッピングとは、ラック列間の通路を透明の壁で区画し、IT機器への給気と排気を物理的に分離することで、エネルギー使用の効率を向上させるものだ。
「第3データセンター」は、このように、自然エネルギーを利用したり、高効率空調システムを採用したりすることで、一般的なDCに比べてCO2排出量を約44%削減する。DCのエネルギー効率を示す指標「PUE」では、1.4の数値を実現している。

5~9階はサーバールーム

24時間365日、システムの稼働状況を監視し、地震関連情報にも迅速に対応

給気と排気を分離するキャッピング方式で電力消費を効率化

建物の下に鋼材ダンパーを備えて強力な免震性を確保