NECシステムテクノロジーは、“システム技術”を徹底的に追求することで、NECグループのITソリューション事業の拡大をリードする。ハードウェアからアプリケーション、運用に至るITシステムのすべてを“システム”という一つの括りで捉える技術を重点的に伸ばす。NECグループが受注するシステムを同社が一気通貫で担うことによって、グループ内での存在感を高めていく方針だ。営業機能は一連の構造改革の過程でNECグループに移管しているため、富山卓二社長は、「NECが“顔”に相当するのだとすれば、当社は“心臓”の役割を担う」と、システム開発の中核的役割を果たしていくと、意気込みを語る。
顧客満足度を高める役割
──NECグループの構造改革で、営業機能をNEC本体やNECネクサソリューションズに移管してから3年目になります。御社は、グループの純粋なソフト開発会社として、どのような役割を果たしておられるのですか。
富山 誤解してもらっては困るのですが、当社は開発だけ行っているわけではありません。2009年10月以降の構造改革の一環のなかで、営業機能については確かにNEC本体などに移管した経緯はあります。ですが、それ以来も、ずっとNECグループとともに顧客のもとへ足を運んで、ともにITソリューション企画や設計、開発に従事してきました。顧客への密着度という点でみれば、当社のほうがずっと深く入り込んで、顧客の要望をいち早く掴んでいるのです。
ここ2年ほどを振り返ると、当社は単独での受注活動ができないというので、主体的なビジネスはできないという雰囲気が漂っていたように思います。ただ、商談のスタートからシステムの設計、開発、保守運用までトータルでこなせるのは当社だけの強みであり、NEC単独ではできません。ビジネスは営業機能だけで完結するわけではなく、むしろそこから先が顧客満足度を高めるうえで重要になってくる。NECが人間でいうところの「顔」だとすれば、当社は「心臓」に相当する重要な役割を果たしているのです。
──御社の主戦場である関西・中四国地区のユーザー企業も、アジア成長国への進出が活発化していることと思います。こうして新しい市場が生まれているわけですが、御社の中国やインドの海外法人は、構造改革の流れのなかで、NECグループの現地法人の子会社へ組み替えになりました。この点については……。
富山 これはNECの企業ガバナンス強化の関係から、子会社経由で海外現地法人をもつよりも、地域を統括する現地法人の傘下に置いたほうが好ましいという判断からです。
ただし、実態は従来と変わらず、当社の関連会社として中国やインド法人を運営しており、NECグループと一体となって海外進出する日系ユーザーや地場の顧客に向けたITソリューションサービスを手がけています。かたちではなく、実態をみていただきたい。
──中国では金融から製造・流通サービスの一般産業に至るまで、IT投資が急拡大しています。NECグループも受注拡大に力を入れていますが、どのような取り組みをしておられますか。
富山 実績は出始めていますが、これまでグローバル対応が十分にできていなかったのが正直なところです。中国では杭州で東忠集団が運営する東忠テクノロジーパーク(東忠科技園)のなかで220人ほどの体制でソフト開発業務を行っています。
──先日、東忠集団の丁偉儒董事長に話を聞いたところ、5万m2もある巨大な東忠テクノロジーパークを開設できたのはNECグループの協力があったからこそと言っていました。これからは中国の他の主要な地域でも協業関係を強化したいとも。
富山 丁さんの構想はすばらしいと思いますが、当社は堅実に歩んでいきたい。理由は杭州220人のスキルセットが日本向けのオフショアソフト開発に寄っており、国内で手がけているようなITライフサイクルをフルカバーできる内容ではないからです。今、東忠集団のバックアップも得ながら、中国地場のビジネスで競争力を発揮できるようスキル転換を進めている最中です。これからNECグループが中国ビジネスをより一段と拡大させていくにあたり、国内と同様に当社が開発や運用の中心的役割を担えるようにしていきたいと考えています。
[次のページ]