2012年1月、米アクロニスのトップが交代した。米レッドハットをはじめ、さまざまなソフトメーカーで経験を積んできたアレックス・ピンチェフ氏が社長兼CEOに就任。物理と仮想のシステム環境が入り交じるハイブリッド環境の増加など、市場の変化にすばやく対応し、誰でもバックアップが使える環境を整えるという。とくに、日本市場では存在感をさらに高めていく方針だ。果たして、どのような戦略を描いているのだろうか。
市場は複雑環境のバックアップ
──今年1月に社長兼CEOに就任されました。就任当初、アクロニスに対しては、どのような印象を抱きましたか。
ピンチェフ 一昨年から社外取締役としてみていましたので、大方は把握していましたが、社長になって改めて当社の社員は優秀だと感じています。それは、社員が生み出す製品がすぐれているから。急激に変化する市場に対応する製品の力、高いシェアを維持する販売の力をもっています。私も社員に負けないように、経営にあたらなければなりません。
──業績を伸ばしていくために、どのような策を講じるのですか。
ピンチェフ 引き続き、市場の変化に対応した製品を投入していきます。
今、ユーザー企業の多くは、膨大なデータを抱えています。システムは物理環境だけでなく仮想環境などさまざま。仮想マシンで稼働しているシステムを別のマシンに移行する「VtoV」も存在します。社内のデータは、なくしてはならない重要な資産ですので、ユーザー企業はバックアップの必要性を理解しているのですが、システム環境が複雑になればなるほど、どのようにバックアップすればいいのかわからないという問題が発生しています。ユーザーは複雑な環境下でも簡単にバックアップできる製品を望んでいますが、すでに当社はその要請に応えることができています。
製品の販売は順調で、とくに集中管理や、物理環境と仮想環境が混在するハイブリッドな環境をバックアップする「Acronis Backup & Recovery 11 Virtual Edition」は、前年比217%に成長しています。
急速な伸びを示す「Acronis Backup & Recovery」シリーズで獲得したライセンスは、17万5000クライアントを超える規模に達しています。ビッグデータ時代の市場環境に即した製品を出しているからこそ、多くの企業が導入してくれているのです。
──しかし、ニーズの高まりにつれて、市場での競争はますます激しくなってきています。他社との競争に勝つうえで、どのあたりを差異化のポイントと捉えておられますか。
ピンチェフ われわれの一番の強みは、仮想化やクラウドなど、どのような環境下にあるデータでも、どのメーカーのストレージにも対応している点です。モバイル端末のデータバックアップも実現しています。「何にでも対応している」という、ありそうでなかった製品を出していることが、他社製品との差異化のポイントになっています。
市場での競争に関しては、ユーザー企業に製品を認めてもらえなければ意味がないので、他社の動きはあまり気にしていません。とにかくユーザー企業が求める製品を開発することに専念する。そうすれば自ずと売れる。ユーザー企業の目線に立つことに今後も重きを置いていきます。
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