メーカーを超えたソフト販売を目指す
──業界のなかで、「アシストはどのような会社なんだろうか」という声を非常によく聞きます。「ソフトウェア販売会社」ということですが、単なる卸業者とは違う。かといって、SIerというわけではない。これが不思議な会社と思われている理由ですが、実際、どのような会社と表現すればいいのですか。
大塚 われわれのミッションは、お客様に代わって製品を選定することです。情報が洪水のように溢れている環境にあって、当社が選んだ製品をお客様が安心して利用できることを目指しています。お客様のニーズに合わせて製品仕様の変更も行っています。これが当社の価値だと自認しています。
──今、取り扱っている製品数は?
大塚 SEを配置してサポートまで手がけているのが50種類程度です。また、取り扱っているとはいい切れませんが、販売パートナーのSIerさんから依頼されて対応した製品は200種類程度に及んでいます。
──製品の選定条件はあるのですか。
大塚 お客様から教えていただいたケースがほとんどです。品質面やメーカーの対応など、お客様から上がってきた声をもとに製品を選定しています。
──今、上がってきている声が最も多い製品やカテゴリは何ですか。
大塚 最近はオープンソースソフトウェア(OSS)についての関心が高いですね。当社も、社内システムやクライアント端末のOSS化でビジネスにつなげるなど、お客様に適した対応ができるような取り組みを積極的に進めています。
──クラウドサービスが活発化しつつありますが、パッケージ一筋のアシストは、この状況をどう捉えていますか。また、そのような時代にあって、立ち位置をどのように考えていますか。
大塚 クラウドサービスの流れは今後も大きくなると捉えています。しかし、それは一つの会社、もしくはグループ会社で利用するプライベートクラウドが拡大するという意味です。パブリッククラウドに関しては、部分的に利用する企業が増えますが、すべてのシステムがクラウド化するとは考えにくい。
──お客さんからクラウドの要望が上がってきた場合は、ビジネスとして手がけるのですか。
大塚 クラウドをビジネスとして手がけているSIerさんを紹介します。実際、案件として獲得したケースもあります。そのなかで、クラウドサービスにはない周辺の必要な機能をパッケージソフトで提供する。これが、当社の立ち位置と認識しています。
──御社は今年3月で設立40周年を迎えましたが、次の40年は?
大塚 今以上にメーカーを超える存在という意味で、「超メーカー」になっていたい。メーカーがサポートできるのは自社製品だけ。しかも、M&Aの過熱化によってロックインを引き起こす可能性がある。一方、当社は、お客様の要望に応じて、さまざまなメーカー製品のサポートができる。お客様の立場から、これまでの枠を超えた取り組みを今後も目指していきます。
・こだわりの鞄 希少価値があり、どうしても手に入れたいと思って購入した独ブランド「RIMOWA」のスーツケース。
かつては、担当している地域を回るための出張が多かったので、スーツケースを頻繁に使っていた。そのため、1台目は壊れてしまい、今は2台目。6年程度は使っているという。
眼光紙背 ~取材を終えて~
ビル・トッテン氏が大塚氏を抜擢したのは信頼の証。大塚氏もトッテン氏の性格を熟知している。困らせてみようと、トッテン氏の「嫌な部分」をあえて聞いてみた。すると、「細かいことで大きな声を出す」という答えが返ってきた。例えば、「応接室など、お客様を招く場所に少しでも埃があったりすると、怒ります。ものすごい剣幕なので、うまく対応できない」と苦笑い。
「めげない」「逃げない」「あまり儲けない」がアシストのコンセプトで、「あまり儲けない」というのは、「当社だけが得するのではなく、お客様から上がってきた声を最優先する」という意味だ。社長就任の会見で、「魔法の粉」とコメントしていたので何のたとえかとたずねたところ、「お客様に対する考え方。当社のノウハウは、なかなか真似できない」と自信をみせる。トッテン氏と大塚氏、そしてアシスト全社に顧客第一主義が根づいている。(郁)
プロフィール
大塚 辰男
大塚 辰男(おおつか たつお)
1956年生まれ、新潟県出身。83年、アシストに入社。システムソフトウェア事業部などで業務に従事し、グループ会社のパンソフィックやエー・シー・エーに出向。その後、アシストの東日本営業本部本部長や西日本支社長を経て、04年、取締役に就任。09年、常務取締役に就任。12年1月、取締役社長に就任し、現在に至る。
会社紹介
米国の大手ソフトウェア会社の社員だったビル・トッテン氏が、市場調査のために1969年に来日し、日本が有望な市場であると確信。72年、製品名にちなんだ日本初のパッケージソフト販売会社としてアシストを設立した。オラクル製パッケージソフトを日本で最初に販売した会社でもある。現在は、データベース、情報活用・分析ツール、システム運用管理ツールの3分野を中心にソフトを販売している。