デスクトップ仮想化やクラウド、コラボレーションなどの分野で、ユーザー企業のニーズの高まりに歩調を合わせて業績を伸ばしている米シトリックス・システムズ。市場の拡大とともに成長してきたが、今後は各地域に適した体制を敷き、アライアンスの強化などによって、さらにビジネス拡大を図る方針だ。「ビジネスとして手がける領域では常にトップクラスのシェアを確保する」と断言するマーク・テンプルトン社長兼CEOに構想を聞いた。
今年度は売上20%増でスタート
──今年度(2012年12月期)第1四半期は、売上高が前年同期比20%増の5億8900万ドルと順調でした。伸びた要因を聞かせてください。
テンプルトン 「デスクトップ仮想化」「オンラインコラボレーション」「クラウドネットワーキング」など、当社が手がけている領域はマーケット自体が2ケタの伸びを示していますので、その好調に引っ張られたことが大きいと認識しています。そして、市場が成長するなかにあって、当社が各カテゴリでトップシェアもしくは2位のシェアを確保していることが好業績の要因だと捉えています。マーケットが拡大するのは、いうまでもなく、製品を求めるユーザー企業が多いことの証ですが、マーケットを創り出しているという点で、シェアの高い当社が市場の拡大に寄与していると自負しています。
──マーケットを創り出すためには、高品質の製品を開発することはもちろんですが、拡販の策を講じる必要がありますね。その点については……。
テンプルトン 大型案件を獲得するための策としては、大手インテグレータとのアライアンスが挙げられます。IBMやアクセンチュアなどとパートナーシップを組んで、公共や金融などの分野でユーザー企業を増やしました。また、日本企業についていえば、富士通などとのアライアンスによってエンタープライズ向けで大きく伸ばしました。社内のダイレクトセールス部門を強化したことも案件獲得につながっています。
──第2四半期はいかがでしたか。
テンプルトン 具体的な数字はまだ発表していませんので申し上げられないのですが、成長しているマーケットで高いシェアを確保しているということで、当社がどのような状況にあるかについては理解していただけると思います。
──マーケットの成長に伴って業績も伸びている。そのなかで、あえて課題を挙げるとすれば……。
テンプルトン これは、どのような状況にあっても胆に銘じているのですが、満点は絶対にあり得ないということです。10点満点でいえば、現状は8点というところでしょうか。では、マイナス2点の原因は何なのか。一つは、各地域をコントロールできているかどうかという懸念です。仮想化をはじめ、当社がビジネスとして手がけている領域は地域によって差がある。適したソリューションをきちんと提供できているかどうかという点は、課題として解決しなければならない。二つ目は、当社は設立から23年で、人間でいえば、まだまだ若いということです。若い割には大きく成長を遂げている。これに漫心せずに、若いからこそ、さらに成長しなければならないと自戒しています。このようなことを踏まえて、マイナス2点と認識しています。また、これは外的要因になりますが、マクロ経済の観点から逆風が吹いており、先の読めない市況感が企業のIT投資を抑制する危険性を孕んでいることもマイナス要因と捉えています。
──「各地域のコントロール」は、具体的にどのようなことを進めるのですか。
テンプルトン 日本がいい例なのですが、2008年まで日本法人は組織や販売チャネルが複雑化していました。そこで、今も日本法人の社長であるマイケル・キングをトップに就けました。マイケルは、他社で13年間、日本をみていたので日本を熟知しており、シンプルな組織体制を敷き、なおかつ販売チャネルの簡略化を図りました。これによって、日本法人は売り上げがグローバルを上回るほどの成長を遂げ、今でもグローバルで最も成長している米国に次ぐ実績を維持しています。つまり、「コントロール」には人材が必要ということです。
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