視点

販社はBYODへの備えを急げ

2012/05/31 16:41

週刊BCN 2012年05月28日vol.1433掲載

 従業員が私物のパソコンやスマートデバイスを会社に持ち込んで仕事に使う、BYOD(Bring Your Own Device)という方式に注目が集まっている。数年前から、米国など海外で盛んになり、日本でもIT企業を中心にBYODを解禁する企業が現れている。業務上で使う端末は企業が一括購入して、セキュリティ対策などを施したうえで従業員に貸与するやり方が一般的だ。しかし、BYODが普及すれば、企業を訪問して端末を販売してきたITベンダーの立ち位置や、端末の商流自体が大きく変わる可能性がある。

 どこでもネットワーク接続が可能なスマートデバイスがビジネスパーソンの間に急速に普及し、それを支えるサービス基盤のクラウドが技術的に枯れ始め、私物端末を業務で使用するにあたって欠かせないセキュリティ・サービスが登場している。端末への投資や資産管理の負荷などを軽減したい企業にとって、BYODは関心の的になっているのだ。企業のシステム担当は、機密情報を入れた端末が紛失や盗難に遭って、情報漏えいを引き起こすことを懸念する。だが、MDMといったツールなどを使ったBYOD向けソリューションが複数ベンダーから登場しており、そうした懸念は解消されつつある。

 国内のパソコン市場は、1500万台レベルに達している。各種調査によれば、個人向けは増加傾向にあり、法人向けが減少気味。Windows OSを搭載したパソコン離れが進み、iOSやAndroidを搭載するスマートデバイスが、市場全体の半数近くを占めると予測されている。BYODが普及する過渡期にあって、仮想デスクトップ(DaaS)の導入が盛んだ。DaaSは、社外への端末持ち出しを禁止することが業務効率を低下させるという課題を解決するための手法として採用が進んでいる。

 このような動きをみると、パソコンの販売やサポートで、将来的にもビジネスが成り立つ可能性は少ないといわざるを得ない。もちろん、自治体や金融、医療など特定用途や社内業務向けには依然としてパソコンは売れるだろうし、一般企業向けのスマートデバイスは安定して供給される。だが、BYOD関連のビジネスが成長段階に入れば、端末の販売だけで事業を継続するのは難しい。大手卸会社からのパソコン流通は減少し、個人向け販売の家電量販店やEC(電子商取引)で端末を購入する傾向が強まる。訪問による端末販売は減るが、クラウドを使った新しいビジネスモデルは形成されるので、それへの備えを急ぐべきと思う。
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