野村総合研究所(NRI)は、クラウドとIT戦略ナビゲーション、グローバルITサポートの三つを成長領域と位置づけてビジネスを伸ばす。国内情報サービス市場がこれから数年の間、年率1~2%の割合で成長すると期待されているなか、「成長を見込む3分野は2ケタ成長する可能性が高い」(嶋本正社長)とみて、重点的に取り組んでいく。クラウドは得意業種のノウハウを生かした業界標準ビジネスプラットフォームを軸とし、グローバルITサポートも絡めたIT戦略をユーザー企業とともに遂行していくことでビジネスを拡大する。
最新DCで「金融クラウド」を立ち上げ
──国内情報サービス市場は、向こう2~3年はプラス成長が見込まれるなど、市場環境は着実に好転しています。 嶋本 プラス基調に転じたのは業界として喜ばしいことですが、伸び率をみると、よくて1~2%程度。「プラス成長」とはいえ、残念ながら誤差の範囲といわざるを得ません。さらに、中身を仔細に分析してみると、伸びる分野とそうでない分野がはっきり分かれていて、市場の様相が大きく変わろうとしていることがみてとれます。
──伸びる分野は、具体的にはどこですか。 嶋本 まず一つとして、「所有から利用へ」の流れのなかで、クラウドコンピューティングを軸としたサービス型ビジネスが伸びます。当社ではこれを「業界標準ビジネスプラットフォーム」と呼んでいます。具体的には、特定の業種で共通して使える基幹業務システムを共有することでコストを削減して、質の高いシステムなどを利用できるようにするプラットフォームビジネスに力を入れています。
二つ目は、ユーザー企業のIT戦略のサポートやナビゲーションです。最初に挙げたビジネスプラットフォームをユーザー自らが構築しようとすれば、多大な設備投資がかかるだけでなく、技術的にも非常に高度なものが求められます。ユーザーが単独でこれらの負担を担い切れる時代ではなくなりつつあって、当社のような専門ベンダーによる支援がこれまで以上に求められています。三つ目はグローバルITサポートであり、少なくともこの3分野に限っていえば、向こう数年の間は2ケタの勢いで成長するとにらんでいます。
──御社はおよそ200億円の巨費を投じて2500ラック相当の最新鋭データセンター(DC)を2012年11月に開業するなど、プラットフォームづくりには相当積極的に取り組んでおられます。 嶋本 「業界標準ビジネスプラットフォーム」を担おうと思えば、このくらいの投資は不可欠です。今般開業した東京第一DCは、首都圏で4番目のDCで、既存の三つと比較してラック数換算ベースでは、実はそれほど大きさは変わりません。しかし、ラックあたりの処理能力では単純計算で3倍以上。つまり既存の三つのDCがすっぽり一つのDCに収まるくらいの能力を誇ります。
東京第一DCの主要な顧客ターゲットとして、当社が得意とする金融分野を位置づけており、ここを拠点に「金融クラウド」の立ち上げを目指しています。大容量の電力供給と高効率な冷却、徹底した仮想化による高集積化によってラックあたりの情報処理能力を飛躍的に高めているのですが、実は処理能力あたりでみると従来型DCよりも大幅に省エネなんですね。「業界標準ビジネスプラットフォーム」の一形態である金融クラウドでは、インフラまわりの維持コストがおおよそ4割削減できる計算です。
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