若手商社マンの時代に米国で過ごした5年間が、川口貴久氏にとって「グローバル」のマインドを醸成するきっかけになった。川口氏は今年10月、ディストリビューション事業を手がけるネットワンパートナーズ(NOP)の社長に就任した。重要なお客様である大手システムインテグレータ(SIer)の海外進出が相次ぐなか、急務だったグローバル対応に着手し、二代目の経営トップとしての特色を鮮明にして、設立から7年目を迎えるNOPの事業を本格的な成長路線に乗せようとしている。
ASEANでパートナー網を着々と築く
──川口さんの社長就任を機に会長に退かれた前社長の齋藤(普吾)さんに数回にわたってインタビューし、事業のグローバル展開についてたずねる機会がありました。そのたびに、齋藤さんは「まあ、当社としては海外は難しいね」と答え、少し消極的な姿勢を示されたことが印象に残っています。ところが、川口社長は、ばりばり「グローバル」に取り組もうとしておられますね。 川口 私は社長に就任する前に、NOPの経営幹部を務めるかたわら、親会社のネットワンシステムズの担当執行役員として、2013年10月に設立されたシンガポール現地法人のオペレーションに関わり、現在もこの業務を継続しています。ネットワンシステムズとしてASEAN諸国で事業を伸ばすだけではなく、NOPとしても海外展開を掲げ、ビジネスのグローバル対応を図りたい。
当社のお客様である日本のSIerは、ASEANを中心に、どんどん事業の海外展開に取り組んでおられます。当社はこれまで、現地での製品調達などに関して、SIerをサポートすることができませんでしたが、私は「グローバル」を大きなチャンスと捉えて、今後は、積極的に取り組みたいと考えています。
──川口社長は、1980年から84年まで、米ロサンゼルスに駐在しておられたとうかがっています。海外市場を重視するマインドは、やはり、そのときに培われたのですか。 川口 大昔の話ですね。商社に入ってロサンゼルス赴任が決まって。ちょうど現地にいたときに子どもが生まれたので、ビジネスだけではなく、米国の社会はどう動いているかとか、日常生活ではどんな習慣があるかとか、アメリカという国についてもっと深く知るきっかけになりました。帰国後も、外資系ベンダーに勤務したりして、グローバル視点をもつことを大切にしてきました。
──御社は海外での対応を実現するために、この10月、「グローバルアライアンス室」を設立されたとか。新規部門はどんなことに取り組んでいるかについて、聞かせてください。 川口 当社の強みは、システム設計や仕様書の確認といった、SIerの仕事の「プリ(前段階)」を支援するサービスにあると捉えています。グローバルアライアンス室は、現在、ASEAN諸国をカバーする3社の地場の構築ベンダーと提携を結んで、現地で調達から保守までを提供するための体制を築いているところです。さらに、地場のディストリビュータとも商談を詰めていて、協業に向けて最終段階に入っています。
お客様からは、「ぜひ、ASEANを一緒に開拓しよう」という励ましの声をいただいているので、今後のグローバル展開について、大変心強く感じているところです。
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