日本のよさを世界に伝える。NTTデータの岩本敏男社長は、グローバルトップベンダーに食い込む意思を強く示す。そのためには自分たちのルーツがどこにあるかを探り、すぐれているところを生かしていくことが、巡り巡って“NTTデータらしさ”という自らのアイデンティティ、他社との差異化につながると考える。M&A(企業の合併や買収)を積極的に仕掛け、アジアや欧米に加えて、中南米への進出を本格化させる同社は、すでに国内と海外の社員数が逆転し、ややもすれば“らしさ”が散漫になる懸念もある。ここで、再度「Our Way(私たちの流儀、やり方)」を明確にして、グローバル企業としての地歩を固める。
当社のルーツ、原点、NTTデータらしさを生かす
──「グローバル第二ステージ」へ進むとしていますが、狙いはどこにあるのですか。 岩本 NTTデータは世界でトップ5に入るITベンダーになろうとしています。上をみればIBM、アクセンチュア、ヒューレット・パッカードなどの並み居る海外大手がいるわけで、海外ビジネス新参者の当社が、本当の意味でグローバルトップクラスのベンダーになるためには、もう一歩、変わらなければならず、一段上のステージへシフトするという表現として「グローバル第二ステージ」と言っているのです。
じゃあ、一段上のステージへと足を踏み入れるにはどうしたらいいのか。それは、当社のルーツ、原点、NTTデータらしさを生かすことだと思っています。品質の高さであったり、一度受けた仕事はどんな障壁があっても粘り強くやり抜いたり、納期を守ったりといった日本的なよさにも通じます。狭義ではプログラムのバグを極力抑えるQC(品質管理)だったりしますが、これはいわばできて当然というか、あたりまえのことで、これに加えて、心地よいサービス、信頼できるサービス、わかりやすい言葉を借りれば「おもてなし」といった日本のよさを生かすことが、次のステージへの道筋になる。
とはいえ、海外では新しく当社に加わってくれた会社が多く、それぞれの会社の歴史や特徴、すぐれた点がありますので、実際にやり抜くのはそう簡単なことではありません。まずは「Our Way(私たちの流儀、やり方)」という言葉で、機会あるごとに世界の社員に向けてメッセージを発しています。
──残念ながら、日本のIT産業は世界をリードしているとは言い切れません。日本的なアプローチでうまくいきますか。 岩本 いや、もちろん押しつけるようなことはしませんよ。自分のルーツや出自を忘れるなということです。同時に進出先の国や地域のことを知らなければなりませんし、個人的にはまずはそんな大上段に構えなくても、親近感をもつことが第一だと思っています。
──海外進出先への親近感ですか。具体的には? 岩本 難しいことではないですよ。そうですね、まずはその国や地域のいいところ、すばらしいところ、あるいは有名なところを、実際に見ることから始めてはどうでしょうか。私自身も、できるだけ頻繁に顧客先やグループ各社へ足を運ぶように努めています。そして、移動の途中の30分、1時間でいいので、少し寄り道をして、その街の名所旧跡を訪ねてみると、親近感が倍増します。世界的に有名な観光地があればなおさらです。タクシーやバスの窓から遠くに見るだけでも違ってきます。決して遊んでいるわけではないですよ。海外からの顧客や当社グループ社員が来たときも、できる限り日本的なところを見てもらうようにしています。
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