使い勝手のいい、簡単明瞭なサービス
──なるほど、単純明快なレンタルサーバーのよさと、柔軟性、拡張性にすぐれたクラウドのよさを組み合わせたわけですね。 村竹 そうです。データ紛失事故を起こした後、私も含めて社員総出で客先にお詫びに出かけました。そのとき感じたのは、私たちはほんとうにユーザーのニーズを掴み、期待に十分応えられていたのだろうかという疑問です。インターネット草創期で、たまたま簡単で手軽なレンタルサーバーが中小企業ユーザーに評価されていただけではないか、と。こうした反省を踏まえて、一から設計し直しました。
──村竹さんご自身、ファーストサーバに入社して以来、ずっとユーザーの声に傾聴する姿勢を貫いてこられたのですか。 村竹 いえ、恥ずかしながらそうではありませんでした。入社して3~4年たった2010年頃だったと思うのですが、SaaS型のウイルス対策サービスなどをセットにしたメニューを拡充したことがありました。当時、経営戦略室に所属していましたので、経営戦略っぽいことをしようといきがっていた時期です。結果は、全面敗北。まったく売れませんでした。ただメニューを拡充するだけでは、専任のIT担当者がいない多くの中小企業ユーザーからは、まったく興味を示してもらえなかったのです。
なぜなのかと悶々とする日が続きましたが、ユーザーの声を聞いているうちに「これは、売れるわけがない」と実感するようになりました。まさに“後の祭り”。中小ユーザーが求めているのは、安くて安全、使い勝手のいい、簡単で明快なサービスです。ごちゃごちゃしたサービスメニューよりも、“一発選定、これを使えばすべてできる”といったわかりやすさなのです。また、私がつまずいていた頃は、実は社内の雰囲気というか、私のように新サービス立ち上げの旗振り役がいる一方で、旗を振られて、否応なくやらされる者がいるという温度差みたいな雰囲気がありました。
──村竹さん的には、経営戦略室でかっこよく新サービスを立ち上げようとして失敗。さらに追い打ちをかけるように事故の発生ですから、まさに泣きっ面に蜂ですね。 村竹 さすがに私も、これではダメだと思って、2010年頃から英国国立ウェールズ大学経営大学院のMBAコースを履修し、一から経営を勉強し直しました。
──英国留学ですか? 村竹 いえ、このMBAコースは、私たちの地元・大阪にもキャンパスがあるんです。自分の担当した事業が失敗した後で、しかも自腹で大枚をはたいての進学ですので、気合い入りまくり。もう後がありませんからね(笑)
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