新規事業の失敗で苦い経験
──ハイバリューといえば、今、IBMが力を入れているコグニティブ・コンピューティングWatsonなどもそうですよね。 廣瀬 WatsonはこれまでIBMによる直販がメインでしたので、正直「チェッ」と舌打ちしていたところなのですが、ここへきてビジネスパートナーでもWatsonを活用する動きが出はじめています。日本IBMがソフトバンクグループとWatsonで提携したのを機に、ビジネスの機会が増えるのではないかと期待しています。Watsonはハイバリューソフトの本命ともいえる存在なので、当社としてもぜひ取り組んでいきたいですね。
──廣瀬さんは、新規事業に対してとても貪欲な印象を受けますが、NTT西日本にお勤めになっていたときからそうだったのですか。 廣瀬 既存ビジネスの継続だけでは売り上げが伸びませんからね。もちろん既存ビジネスやストック型のビジネスのしっかりとした事業基盤があるからこそ新規事業に挑戦できるわけなので、既存と新規はいわばクルマの両輪。ただ、個人的にはNTT西日本で新規事業を任せてもらうことが多かったかもしれませんね。
──どんな新規事業だったのですか。 廣瀬 そうですね、例えばNTT東西で「フレッツ光」という光ケーブルによる接続サービスがあるのですが、このフレッツは“閉域網”で、インターネットへはプロバイダを経由して接続します。閉域網とは完全に閉じたネットワークですので、私は個々人や事業所にあるパソコンのCPUが空いているときに、科学技術計算などが受託できないかと考えました。2000年頃に注目されたグリッド・コンピューティングと呼ばれる手法で、地球外知的生命体探査の電波解析で知られているかと思います。そこで、実際にフレッツのユーザーのパソコン3000台を借りてシステムを構築。閉域網であるフレッツだからこそできる技で、NTT西日本に課せられた地域通信の規制を逆手にとったアイデアでもある。
──で、結果はどうだったのですか。 廣瀬 それが全然ダメだったのですよ。自動車業界や海流研究を手がけているところとか大規模計算のニーズがあるところを中心に3年くらい辛抱強く粘ったのですが、からっきしでしたね。スパコンに比べて圧倒的なコストパフォーマンスを誇るグリッド・コンピューティングで、かつフレッツの閉域網を使うため情報セキュリティも担保できる。計算するデータは断片化しますので、万が一、漏れても意味をなさない数字の羅列でしかない。とはいえ、当時はまだ知名度が足らず、実績もなかったのが敗因でしょう。あのときは、ほんとうに悔しかった。
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