ITホールディングス(ITHD)は、グループの事業ポートフォリオをより明確にすることで、筋肉質な企業体への変化を志向している。グループそれぞれのよさを生かしつつ、重複部分を解消して、収益力を一段と高めるのが狙いだ。ITHD創業者らの後を継いでグループトップの舵取りを担って3年目。主要な事業会社5社の社長と集団経営体制を構築。前西流の巧みな“集団経営術”によって、事業ポートフォリオの強靱化を推し進める。
事業持ち株の議論を活発化
──独立系SIer最大手のITホールディングス(ITHD)グループを率いて3年目になりますが、まずはこれまでの自己採点をお願いします。 前西 そうですね、60~70点といったところでしょうか。できたこと、できなかったことそれぞれありますが、できたところは当社ITホールディングスグループの一体感を強めるとともに、次の成長につなげられるビジネスの萌芽をいくつか育てられたことです。逆にまだ十分でない点は収益力。新しいビジネスは芽吹いてきたものの、じゃあ、それが収益を支える大きな大樹に育っているかといえば、まだこれからの話です。
──ITHDはインテックとTISが中核となってグループを形成し、それぞれの強みを生かし、補完し合うことで独立系SIerのトップにのぼり詰めてきました。とはいえ、ひと癖もふた癖もあるグループ各社をどう取りまとめるかが、実はいちばんご苦労されたのでは? 前西 ご指摘の通りで、ただ持ち株会社の傘下に入っただけでは相乗効果は限定的です。そこで持ち株社長の私がとりまとめ役を担うかたちでインテック、TIS、アグレックス、クオリカ、AJSの主要5社の社長を集めた「社長会」を毎月開いて、実質的な経営方針、経営戦略を決める体制をつくりました。主要な事業会社が自由闊達な議論をする場を提供することによって、グループの一体感を醸成する土台ができたと自負しています。
──今の「持ち株会社」の体制から「事業持ち株」の体制へと再編する検討を始めているとのことですが、「検討」だけなのでしょうか。 前西 つまり、どうして「検討します」って情報を開示したかって質問ですよね。「社長会」などでブレーンストーミング的に議論を交わし、市場や事業環境の変化適応に向けた最適解を導き出すために常に努力しています。そのなかに今のままの持ち株傘下に寄り集まっている状態がいいのかどうかというテーマも含まれているのですが、こうした検討をしている事実を開示しないことには、議論を広げられないのですよ。中途半端な情報が漏れれば、インサイダー取引の規制に抵触しかねませんし、情報を出さないようにするにはほんとうに限られた人しか議論に参加できない。そうではなくて、もっと多くの人に議論に参加してもらい、いいアイデアを出してほしいと思い、開示しました。
一応、来年4月までに結論を出す予定ですが、TISとインテックが合併するとか、何らかの話が決まっているわけでは当然ありませんので、誤解なきようお願いしますね。
[次のページ]