アプリケーションデリバリコントローラ(ADC)やロードバランサ(負荷分散装置)で知られるA10ネットワークスに、2015年1月、日本法人代表に川口亨氏が就任した。外資系企業を渡り歩き、米国本社と日本法人の関係を取りもつことに長けた川口氏が、A10ネットワークスに入社して感じたことは、「日本をベースに動いている」ということ。日本法人の意向を汲んで米国本社が製品・サービスを開発するというサイクルを構築し、新たな領域へと参入する方針だ。川口氏に今後の方向性を聞いた。
日本法人がイニシアティブをとる
──社長としてA10ネットワークスに入られたときのことを振り返ってください。第一印象はいかがでしたか。 米国本社の外資系企業に勤めた経験が多いので、それとの対比になってしまいますが、第一印象は「人を大切にする会社」ということでした。
具体的にいうと、お客様やパートナーの立場をきちんと踏まえて、ビジネスの方針を決めている。ですから、「われわれはすばらしい製品・サービスをもっている」「価値を生み出すから使ったほうがいい」など、外資系企業にありがちな“上から目線”のスタイルというよりは、お客様に教えていただきながら、会社の方向性を決めて製品・サービスを開発している、という印象です。しかも、米国本社の押し付けではなく、日本のお客様やパートナーの意向を踏まえて、実際の施策として取り入れている、ということを強く感じました。この印象は今も変わっていません。
──さまざまな外資系企業を経験したからこそ感じた印象ですね。 そうなんです。ほかにも、いろいろありますよ。たくさん話したくなっちゃうんですけど(笑)、もともと米国本社の意向が強い会社にいましたので、これまでは、「どうやって日本法人を本社に売り込むか」と、間に立って米国本社を納得させるということに苦労してきたのですが、当社にきて「ずいぶんと日本のことを気にしてくれている」「むしろ日本がベースになって、ものごとが決まっているところすらある」という印象が、日を増すごとに強まった。ですので、むこう(米国)と対峙してバランスを取るよりは、こちら(日本)がイニシアティブをとる、という考えで、ものごとを進めたほうがいいと判断しました。語弊があるかもしれませんが、「こういうことをやろうと思うんですけど、どうでしょうか」と米国本社におうかがいを立てるより、「こうやるから、よろしく」と伝えたほうがいいんです。
──「日本法人の考え方に口を出すな」というような態度ですか。 そのような考えのほうがしっくりくるということです。今までの会社は、こちらの意向を即座に跳ね返されるケースがかなりあったのが事実。ですので、当社にきてからは、米国本社との“間合い”をつくるのにちょっと時間がかかりましたが、懐深くに入り込めるという感覚をつかんでから、日本市場に関しては、日本法人がイニシアティブをもって進めています。
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