3年で2倍のビジネス規模に
──エンタープライズ領域は多くの競合がいます。勝算はありますか。 先ほど話したようにパートナーとの関係を深めて、お客様に当社製品の存在と強みを認めていただくことがカギで、もう一つは当社自身の「知名度」を高めていくことだと考えています。
「ブランドアウェアネス」といっていますが、単に会社の名前を知ってもらうというわけではなくて、当社が何をやっている会社なのか、どういう価値をお客様に提供する会社なのかという意味での知名度を高めたいんです。業界では、当社がロードバランサメーカーであるということは、ある程度、知られていると認識していますが、新しい領域でビジネスを拡大していくうえでも、まずは「A10ネットワークス=ロードバランサ」という固定したイメージを変えたいと思っています。
当社のことをすでに知っている人には、そのイメージを変えていく。知らないお客様には、当社が何の会社なのかを正しく理解してもらう。ロードバランサだけでなく、IPv6移行、DDoS防御、ネットワーク管理などに適した製品ももっている。しかも、今後はエンタープライズ領域のお客様の要望を聞いて、それを製品・サービスの開発につなげる。さらに、業界関連のトレードショーやイベントに積極的に参加するなど、当社側からもお客様にイメージを直接訴える取り組みを進めていきます。
──ビジネス規模の見込みは。 個人的には、当社のもっている製品と開発のポテンシャル、スタッフ、パートナーの力を合わせれば、「3年で2倍」はやれない数字ではないと確信しています。
日本市場のIT投資は、ここ10年、伸びもせず減りもせず、ずっとフラットですよね。ところが、当社の属する市場は間違いなくホットスペースにある。ですので、「3年で2倍」は実現できる。むしろ、それぐらいやらないとおもしろくないですね。

‘むこう(米国)と対峙してバランスを取るよりは、こちら(日本)がイニシアティブをとる、という考えで、ものごとを進めたほうがいい’<“KEY PERSON”の愛用品>昔のロゴがお気に入り 米国のブランド「hartmann(ハートマン)」のレザーグッズを、1980年代頃から愛用。アタッシュケースから始まり、「米国出張の度に一つひとつ増やした」という。10年ほど前にロゴが変わってからは、とくに大切にしている。
眼光紙背 ~取材を終えて~
外資系企業での経験が豊富な川口氏が語るA10ネットワークスは、本社の意向に必ずしも左右されず、日本色が強い。ただ、「(日本法人として)本社に対して意見がいえる場がありながら、これまで社員は、どちらかというと『待っている』状態だった」そうだ。「生産性があり、ビジネスとして結実するものであれば、跳ね返されない場合が多い」文化であることから、社員一人ひとりが自由に提言できる風土をつくり、多くの社員の声を取り入れたビジネスプランを本社へ届けることに積極的に取り組んでいる。川口氏による米国本社との折衝も大きい。
現在、「2~3年後に来る」と想定する大きな波へ向けて、準備を進めている。パートナーと連携してセキュリティやエンタープライズなどのホワイトスペースを狙い、新たな領域における事業の開拓を目指す。(宙)
プロフィール
川口 亨
川口 亨(かわぐち とおる)
1957年1月、東京都生まれ。日本アイ・ビー・エム、日本ユニバック(現日本ユニシス)では、10年以上にわたり大型汎用コンピュータの大手製造業分野への販売事業を統括。その後、日本エスディーアールシー、think3、エムエスシーソフトウェア、フレクセラ・ソフトウェアで日本法人代表を歴任。2011年、ブルーコートシステムズの日本法人プレジデント&マネージングディレクターに就任。15年1月、A10ネットワークス日本法人の代表兼社長に就任。米国本社バイスプレジデントを兼務する。
会社紹介
アプリケーションデリバリコントローラ(ADC)やロードバランサ(負荷分散装置)を提供する米A10ネットワークスの日本法人として、2009年3月に設立。現在、セキュリティ機能の強化や、エンタープライズをターゲットにした事業の拡大を図っている。