エクイニクス・ジャパンは、データセンター(DC)を軸に、ヒト・モノ・カネの集まる仕組みをつくることで成長につなげる。それらが集まることで経済が繁栄するように、DCも有力な顧客が集まり、さまざまなアプリケーションやサービスが行き交う“拠点”に仕立てることで、付加価値や競争力が高まるというわけだ。国内大手独立系DC事業者のビットアイルをグループに迎え入れ、国内での設備規模を倍増させた。古田敬社長は、インターネット仮想空間において経済が活性化する施策を打つことで「顧客から選ばれるDCになる」と話す。
DCが「貸金庫」である時代は終わった
──旧ビットアイル(現ビットアイル・エクイニクス)を昨年末にグループへ迎え入れたことで、国内DCは12か所に増えましたが、どのような効果が期待できますか。 正確には現在準備中の都内DCが、この春までに開業することで計12か所となります。首都圏10か所、大阪2か所で、旧ビットアイルが当社グループに加わったことで、一気に国内DC規模は倍増しました。狙いは「顧客から選ばれるDCになる」ことです。
──具体的にはどういうことでしょうか。 DCの差異化要因は、規模のメリットによる価格競争力であったり、インターネットへの接続性、グローバルでの対応力などが挙げられますが、これらを総合するとインターネット上の「論理的な立地」なんですね。つまり、インターネットの空間を、現実の“不動産”に見立てて、その「論理的な土地」の価値をどれだけ高められるかが、DCビジネスの成長のカギを握るとみているのです。
もっとわかりやすく言えば、世界にはたくさんの空港がありますが、そのなかで航空ネットワークが機能するためになくてはならない「ハブ空港」になれる空港は限られています。閑散とした地方空港ではなく、大都市のハブ空港のようなポジションを占め、さらにそのなかでも「顧客から選ばれる」存在になることが、大手DC事業者として勝ち残る道です。このために旧ビットアイルをグループに迎え入れられるものであれば、ぜひとも実現したいと2年ほど前から思っていました。
──つまり、単純に規模が大きいほうが有利になるということでしょうか。 もちろん規模の追求はDCビジネスにとって重要なことです。ですが、ライバル企業も、当然この点を追求してくるわけで、規模だけでそう易々と勝てるとは思えません。例えば、首都圏には成田と羽田の二つの大きな空港がありますよね。あり得ない話ですが、もしこの二つのうち、どちらかを選べと言われたら、どちらがより多くの人に選ばれるでしょうか。いずれを選ぶにせよ、その要因となるものはごく小さなもので──オフィスから近いとか、空港がきれいとか──、そうした小さな要因が積み重なって、より多くの人が集まる空港になっていくのです。
──「ハブ空港」理論は、御社のDCビジネスの基本戦略ともいえそうですね。 航空ネットワークのなかでハブのポジションを占めることは、その空港の価値をぐっと高めます。多くの航空会社がそこへ接続しようとするでしょうし、乗り換え可能な路線が増えれば増えるほど、ヒトもカネも集まるようになります。DCもこうしたポジションを狙うべきであり、かつてのように顧客のサーバーやデータを預かる「貸金庫」的なものではなくなってきているのです。
[次のページ]