大きな可能性を感じた──。キューアンドエーの創業者として悩んだ末に、4月1日付でIT機器レンタル大手で横河電機グループの横河レンタ・リースの社長に就任した。金川裕一社長にとって横河電機は古巣。来年で創業30年を迎える同社の改革を託された。まずは、パソコンをプラットフォームにして、クラウドコンピューティングや運用・保守を含めたサービスを拡大する。ハードウェアも「購入から利用」であることを業界で根付かせ、同社の事業拡大を目指す。
「未知の可能性」を開花させる
──キューアンドエーの社長から、横河レンタ・リースの社長(2016年4月)に転身した経緯をお聞かせください。 1996年11月に自分の発案で横河マルチメディア(現・キューアンドエー)を設立しました。2000年には、横河電機を退職し移籍しています。横河電機を退職し、キューアンドエーで20年勤めましたから、正直、サラリーマン人生をそのまままっとうするため、最終コーナーを回るところでした。ところが、2年前に横河レンタ・リースの社長就任を打診されました。かなり悩みました。キューアンドエーは、自分で会社を立ち上げ、自分で営業し、自分の顧客もたくさんいる。関係者のみなさんに迷惑をかける可能性があると思ったからです。かなり考えた末に、もう一度チャレンジすることは、自分の人生で“あり”と判断したのです。
──人生の岐路で大きな決断をさせるほど、横河レンタ・リースに魅力を感じたということですか。 横河レンタ・リースは、来年30周年を迎えます。30年前、横河電機の(横河レンタ・リース設立などにも関連する)企画部門にいました。全然知らない会社ではないんです。その会社が丸30年を迎える。「企業30年説」とかいわれます。いまが変革の時だと思いました。会社設立当初は、電子計測器などのレンタル事業をしていましたが、いまでは売上規模でIT系が大部分になっています。IT業界で培った自分の知見を生かすことができると感じたんです。
──社長に就任する前と今では「横河レンタ・リース」という会社の印象はどう違いますか。 就任前に比べ、この会社は非常に可能性があると感じました。物を仕入れてレンタルしたり販売することでは、ボリュームが大きいだけに業界で相当影響力がある。物を調達することでは、ディストリビュータやメーカーとのつき合いが非常に広い。一方で、レンタルし販売しているチャネル販売でも、自ら開拓し顧客を捕まえている。月間では、数十万台規模の機器を顧客に届けています。
──大量に仕入れ、大量に捌く力が魅力的だと。 レンタルで顧客に納めるための物を大量に仕入れ、レンタル用に仕立てる力は相当あります。例えば、レンタルで年間何百億円を売り上げたとします。2年~5年程度のスパンがレンタル期間ですので、その間は月額で収益を得る形になります。3分の1の売り上げ、4分の1の売り上げで何百億円を稼いでいるんです。トータルの金額で換算すると、もっと大きな取引をしていることになるんですよ。
──「可能性がある」とおっしゃっているということは、まだ見ぬ「未知の可能性」があるということですか。 数十万台のパソコンなど、ハードウェアを中心にしたIT機器の販売をしています。これまでの収益の柱は、ハードなんです。いま、ハードのレンタルは、ソフトウェアの世界でいえば、クラウドコンピューティングなんです。ハードをプラットフォームとみれば、そこにソフトやサービスなどをプラスアルファでのせられれば、収益体質が大きく変わります。いまはまだ弱いですが。

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