200億円程度稼げる業種特化の市場を開拓
──三つのうちのLEDに関しては、インクジェット方式のプリンタが台頭してきていますよね。LEDで勝てますか。 いま、競合他社のビジネス・インクジェット・プリンタが相当オフィス領域に入ってきています。LEDは、レーザーに対し小型化ができます。クーポンや流通POPなどのプリントではレーザーよりLEDに分があります。小型プリンタでインクジェットがありますが、インクジェットの欠点は色目で、印字品質を気にするユーザーに対して課題があります。もう一つは、印刷媒体が限られる。例えば、ホームセンターの屋外で植木に付ける値札やPOPは、インクジェットでは厳しい。医療用途では、LEDは階調性がすぐれていますので、医療画像にLEDが向いていて、新興国中心に浸透しています。
──LEDプリンタで対応できる用途を拡大すると。 プリンタ用途をインダストリー(業種)とオフィスにわけて考えていますが、インダストリー向けにプリンタベースの印刷システムで対応できる領域は、まだまだある。グローバルで調べると、かなり規模がある。医療向けですと、当社で調べていますが、ざっと見積もっても、当社LEDで対応できるマーケットが6000億円ある。仮に、一つのインダストリーで2000億円の市場があるとしますと、10%獲得しても200億円です。100~200億円のマーケットを10程度開拓できれば、いまの規模は維持できると思っています。
──ただ、競合他社もマーケットが縮小するなかで、新たなプリント用途を探していますので、競争が激化しています。世界だと習慣などによって仕様が変わり個々に対応するので難しくないですか。 海外の販社はオフィスプリンタを売る体制になっています。まだ、課題ですが、もう少し、顧客の業種や印刷環境を理解できる人材を育てる必要があります。海外拠点にある人材やネットワークを使って販売を伸ばせると考えています。
「用途開発」をして印刷需要をマトリックス化
──IoTとAIに関して、OKIデータとしてどう取り込んでいきますか。 二つあると思っています。個人的にはAIを研究していました。大手総合電機やGoogleもそうですが、新しい知識創造社会を支配しようとしているように感じています。AIに、どんどんデータを食わせて、ナレッジの空間をつくりプラットフォーム化して収益を上げるビジネスを進めています。沖電気工業の体力で、それはできない。トッププレイヤーになり場の支配は難しい。当社が目指すAIは、一つが開発効率を上げるためで、例えば色目の調整をディープラーニングを使って効率化する。もう一つは、MPS(マネージド・プリント・サービス)のようにデータをサーバーに上げるのではなく、ある程度プリンタ内に閉じた診断ができるようにする。例えば、故障予知や消耗品の予測などをマシン側でできるようにしたらどうかと考えています。ソフトウェアの構造自体を変更する必要がありますが、そこにはチャレンジしたいです。
──MPSの話が出ましたので言及しますが、MPSを導入しますか。 MPSは理屈上、絶対儲からないと思います。ジャブジャブと消耗品を使いコストをかけるユーザーがいたとして、それを省力化したり、枚数を制限しない限り儲かるわけがない。プリンタの運用コストを下げる用途で提供するMPSは自殺行為です。
──ボリュームがある一般オフィスは、どう攻めていきますか。 一般オフィス市場を、当社がどう位置づけるか。インダストリーより台数が出ますので、一定規模を維持するため、絶対に捨てられない市場です。今後は、どう当社のビジネスを効率化するかだと思います。ユーザーは高い品質を要求しなくなっていますので、スモールオフィスの領域では、インクジェット・プリンタが相当席巻すると思っています。
──インクジェットの領域への参入はありませんよね。 いまのところはね。ただ、インクジェットとレーザーの方式がありますが、LEDプリンタは勢力になっていない。一方で、LEDヘッドの微細化は進めなければいけないと思っています。価格を安くできますから。
──中計に向けた動きが活発ですが、実現に向けた組織体制はどのように組みますか。 もう少し、プロダクトマーケティングをしっかりやりたい。自分の設計したプリンタがどの状態にあり、顧客からどの部分が支持されているのか、プロダクトを軸にした製品企画やマーケティングがやや弱い。本当のプリンタのソリューションは「用途開発」と思っています。この色目で何枚印刷できるか、印刷媒体に応じて、どんなトナーや溶剤などを使い、どういう色目のモノを、どの程度の時間とコストで印刷できるか、といったことができるのがソリューションであり、「用途開発」だと思っています。細かいインダストリーに対し、どんな印刷需要があるかマトリックスに埋めていきたいです。

OKIデータはOKIデータなりに、プリンタにIoTやAIなどを組み込んだソリューションをつくる
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