「コンカー」を経費精算の代名詞に
──昨年は他社との協業を推し進めていた印象があります。それも全自動化を見据えてということですよね。
はい。われわれは「オープンプラットフォーム化」ということを打ち出してやっているのですが、そもそもの発想として、経費はさまざまなところで発生します。タクシーに乗ったり、駐車場を使ったり、ホテルを予約したりします。こうした経費の発生源はさまざまなのに、最終的には人間が集約しなくてはいけないというところに負担の原因があると思っていました。
そこで、外部の経費の発生源に対してデータとプロセスを連携することによって、あたかもコンカーがその外部の経費の発生源の一部であるかのように、あるいは外部の経費の発生源がコンカーの一部であるかのように連携し、全自動化を進めようというビジョンを打ち出しました。
その結果として、「全国タクシー」や「Uber」「ぐるなび」「タイムズ24」「Sansan」「駅すぱあと」などとの連携サービスを発表しています。
──現在は何社と連携されているのですか。
18社です。2020年までに50社程度まで増やしたいと思います。
──今後、御社はどのようなことを目指していきますか。
大きな目標として掲げているのは、「コンカー」という言葉を経費精算の代名詞にするということです。例えば「ググる」であったり、商品名が分野名になっているものってありますよね。それくらい、コンカーが経費精算の代名詞として日本で認知されるような状況をつくっていきたい。
この5年間で、日本の大手企業の浸透率が24%まできましたが、20年までには海外並みの60%を実現したいと思っています。
また今回、国に対して積極的に働きかけた結果として規制緩和の実現に至りましたが、この規制緩和のアプローチというのは一過性のものではありません。今回の働きかけを通じて、経産省や財務省と非常に強いパイプができました。日本の企業のために必要な規制緩和というのは、われわれがある種の使命感をもって、政府に働きかけていきたいです。
──今課題と感じていることがありますか。
e-文書法の規制緩和が実現しましたが、運用面でもう少しこうしてほしいという要望が、すでに企業側で出始めています。
規制緩和は紙ありきなんですよね。つまり、一回紙で出てきたものをスマートフォンで電子化するということ。将来は、この紙そのものをなくしたいんです。電子的に経費の情報をやりとりして、それですむような社会を実現したい。そのためには企業側の努力も必要ですし、規制側の調整も必要。その両側にわれわれが立ち、積極的に動いていきたいと思います。
数年後には、
「経費精算って昔は面倒だったんだよ」って
若い人に言っているような時代になると思いますね。 <“KEY PERSON”の愛用品>休みの日はこれだけで プライベートで利用するマネークリップ。ふだんは長財布を使っているが、休みの日はジーンズなど軽装が多く、ポケットに入らないことから愛用。「米本社の社長が使っているのを見て、いいなと思った」ことがきっかけだったそうだ。
眼光紙背 ~取材を終えて~
「日本を米国に次ぐ二番目の市場にしたい」と語る三村社長。SAPにいたときも同じ思いを抱いていたが、「米国、ドイツという序列を崩せなかった」。しかし、コンカーでは実現できる手応えがある。「今は、米英に次いで、ドイツと日本で3位争いをしている状況。この2~3年のうちには日本が2位になれるように取り組んでいきたい」と力を込める。
コンカーがSMB向けにビジネスを展開するのは、米、英、オーストラリアに次いで4か国目で、非英語圏では最初の国になるという。日本のビジネスが好調ということで、本社の期待とバックアップを受けながら、ビジネス拡大に拍車をかける。(宙)
プロフィール
三村真宗
(みむら まさむね)
1969年、東京都出身。93年、慶應義塾大学法学部を卒業後、SAPジャパンに創業メンバーとして入社。ビジネス・インテリジェンス事業本部長、社長室長、戦略製品事業バイスプレジデントなどの要職を歴任する。2006年、マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社し、金融や通信業界のIT戦略策定、ソフトウェア事業のBPRなどに従事。09年、ベタープレイス・ジャパンでシニアバイスプレジデントを務める。11年10月、コンカー日本法人の代表取締役社長に就任。現在に至る。
会社紹介
米Concur Technologiesの日本法人として、2011年2月にサンブリッジと合弁で設立。14年よりSAPグループの一員となる。クラウド型経費精算サービスを提供し、グローバルでは3万5800社、日本では540社の導入実績がある。また、Great Place to Work Institute Japanの「働きがいのある会社」ランキングでは、従業員25~99人部門において、15年から3年連続でベストカンパニーに選出されるなど、働きやすい環境づくりにも力を入れている。