データ保護ソリューションベンダーの米Arcserveが、米CA Technologiesから独立して3年半が経った。昨年10月には創業者のマイク・クレスト氏が退任し、トム・シグノーレロ氏がCEOに就任。また、ほぼ同時期にセールスとマーケティングの責任者2名を新たに迎えた。新体制のもと、Arcserveはビジネス領域拡大に向けた新たな一歩を踏み出した。
米CAから独立、事業拡大へ
──米CAから独立し、3年半が経ちました。率直に、独立は成功していますか? また何が大きく変わったのでしょうか。
販売パートナーとの関係がよくなりました。CA時代に悪かったというわけではありませんが、より密接になりました。CAにはいろいろなジャンルのプロダクトがあり、いろいろな担当部署がパートナーにアプローチをかけていました。パートナーからみると、CAの人間が入れ替わり訪れていたわけです。専業ベンダーになることで、より会社の色が出せるようになりました。
また、ほかの事業で利益が担保できなくなった場合、会社全体で調整し、その結果として出張の許可が下りないということが、とくに年度末にありました。地方のパートナーのイベントに参加したくてもフリーズしてしまう。そういうもどかしさが解消しました。
社内決定のスピードが上がったことも大きな変化です。CAはチェック部門の数が多く、一つの承認を取るにも社内手続きが大変でした。独立して決断のスピードがとても速くなりました。このスピード感は開発にも生かされています。
パートナーとの関係強化、スピードアップなどにより、業績は好調です。グローバルでは業界の成長率が5.5%のところ、わが社のシェアは前年同期比で28.3%増加しました。日本市場も好調で、営業成績は、16年度に前年比20%成長し、17年度(17年4月~18年3月)は前年比19%くらいの成長で締まりそうです。Windows向けのバックアップ市場では、55.6%のシェアを獲得しています。売上高、収益とも成長し、健全なビジネスを続けています。独立がうまく行った証だと思っています。
──昨年、2社を買収しましたが、今後も買収を続けていくのでしょうか。
既存の事業を補強するため、メールアーカイブ技術をもつFastArchiver社と、企業向けクラウド災害復旧ソリューションをもつZetta社を買収しました。この2社を買収することで、新たに展開できるビジネス領域が拡大しました。既存の製品と新たに加わった製品を統合し、われわれが事業を展開している分野で、さらにフォーカスして力強く進んでいきます。
ですが、買収はこれで終わったわけではありません。買収先の候補として、サイバーセキュリティ、次にビッグデータのアナリティクスを検討しています。今後、システムのクラウド化が進んでいきますが、その時、一番課題になるのがセキュリティです。その次は、せっかくもっているデータを活用しよう、分析しよう、という時代がきます。ただ、戦略に掲げている分野を必ずしもすべて買収で賄う必要はないと思っています。すでに技術をもっているパートナーとともに市場を開拓する道もあると思っています。
日本ではアプライアンスが好調
──今、注力している、もしくは好調な製品を教えてください。
バックアップ専用アプライアンス「Arcserve Unified Data Protection(UDP)シリーズ」が好調です。受注件数では前年比36%増と、今やポートフォリオのなかで重要な柱になっています。
──日本の市場ではいかがでしょうか?
日本市場ではとくに好評です。出荷台数は昨四半期比で2.5倍と、大きく成長しています。ソフトウェア版は、数TBの小さいシステムで活用されていますが、数十TBを超えるシステム用にアプライアンス製品が選ばれています。アプライアンス製品のよさは、ストレージ容量によって価格が決まっており、いくつゲストOSがあってもライセンスの追加料金がかからない点です。5年間まったく追加料金が発生しないので、運用コストという点でわかりやすく、日本のお客様にマッチしていて、毎年出荷台数が倍に伸びています。
ラインアップは12TBモデルと24TBモデルがあります。発売当初は24TBモデルの販売比率は10%ほどだろうと予想していましたが、蓋を開けてみると20%と少し大きい数字で推移しています。この伸びはしばらく続くと思います。
──日本ではHCIが大変注目を集めています。UDPシリーズは物理サーバーだけではなく、仮想サーバーにも対応しているそうですが、HCIの伸びも影響していますか?
HCIのバックアップ用として、UDPシリーズを選ばれるお客様が増えています。パートナーも、HCIとセットで提案するという方針を打ち出しているところがあります。HCIを導入するお客様は導入コスト、とくに運用コストを気にするお客様が多いです。アプライアンス製品は運用コストを重視するお客様に非常に人気があります。またシンプルでわかりやすいので、パートナーも採用しやすいようです。
──アプライアンス製品について、日本独自の取り組みはありますか?
日本ベンダーのサーバーを使い、日本でキッティングしています。例えばEMEAは、本社でキッティングした製品を輸入しています。その点、日本市場ではNASベンダーのニューテックにハードウェアの部分をお願いしています。一次サポートはArcserve Japanですが、ハードウェアの知識はありません。そのため、ハードウェアの保守もニューテックにお願いしています。当初、日本市場も本社からの輸入で対応するという案がありましたが、日本のお客様のサポートに関する要望に十分お応えできないので、日本のパートナーと組んで展開することにしました。
──日本市場では、パートナー戦略が何より重要になります。その手ごたえはいかがですか?
Arcserveにとって、日本が最大規模の市場です。そのため、これまでArcserve Japanのメンバーが日本のパートナーとの関係を築き上げてきました。パートナープログラムに参加している日本企業は1000社を超えました。xSPの販売網を構築済みのパートナーは74社になります。私は25年間ITの業界にいますが、ここまでのレベルのパートナーシップを築くことができたのは、非常に貴重なことだと思っています。
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