日本はむしろIoT先進国
──デバイスを賢くしていくという意味では、英アームの「Arm Mbed Cloud」のパートナーとなり、同社製チップ搭載のIoTデバイスを容易に開発する環境も整えていますね。
当社自身がビジネスコンサルタント、戦略コンサルタントを相当数抱えていて、enebularによるIoTビジネスの立ち上げ支援は手がけていますし、コンサルティングを手がけてくれているパートナーもアクティブに活動してくれています。ただ、やはりIoTのデバイス側のパートナーがいないと実際にはビジネスが立ち上がっていかないですから、エコシステムの拡充は重要な取り組みだと思っています。とくにデバイスメーカーなどへのアプローチは、アームと密接に連携してやっていきます。また、世界中のすばらしいデバイスメーカーがありますから、協業の対象となるパートナーも日本に限定せず探していきます。今年3月に英国法人も開設しましたが、まさにそうした取り組みの一環です。
──グローバルでIoTビジネスを考えた場合、日本市場の動きは遅れていると感じますか。よくそうした指摘が聞かれますが。
私は世界中の事例をいろいろみてきたと自負していますが、日本が遅れているとは思っていません。むしろIoT先進国だと思いますよ。IoTというのは、Things、つまりモノ側の話がすごく重要で、日本ではかなりの近距離に非常に多様な製造業が存在していますし、クラウド側とモノ側のプレイヤーも肩が触れ合うような距離感で存在しています。こういう産業クラスタがある国というのは、世界的に珍しいんですよ。さらに、少子高齢化という大きな社会的課題がある。基本的には、人間ができることをテクノロジーで効率化するというのは、雇用の問題もあって抵抗が大きいものです。しかし日本は深刻な人手不足という課題が顕在化していますので、マシンに頼ることへの抵抗感が薄い。これらの社会的なコンテキストが、IoTのユースケースをつくりやすい環境を形成しているんです。まずはユースケースを日本でつくり、それをグローバルに展開していく。そんな成長ビジョンを描いています。
エンジニアやビジネス開発の方々向けの環境を用意するのはもちろん、子どもたちがIoTのサービスを発想できるようなところまでいくと、世の中も次のフェーズに移行できるんじゃないかと思っていて、そこをenebularで手伝っていきたいと思っています。
<“KEY PERSON”の愛用品>「ご縁」に感謝、小銭入れにはいつも五円玉
週に三回は神社にお参りするため、小銭入れに賽銭用の五円玉を入れて常に携帯している。「縁に恵まれてここまでこれたことを忘れずに感謝の気持ちを持ち続けるため」だという。小銭入れは、コーポレートカラーの緑のものを選んだ。
眼光紙背 ~取材を終えて~
SFDCの有力パートナーとしてクラウドビジネスで成長し、いまやIoTのトレンドをけん引する注目ベンダーの経営トップ。今回のインタビューで初めてお目にかかった園田さんに対して、クールで合理性を重んじるドライなキャラクターなのだろうという先入観を勝手に抱いていた。ところが、enebularのリリース日に込められた思いや、習慣的に神社にお参りをしているお話(14面に参照記事)などをうかがうにつれ、そのイメージは覆された。ご本人にそれを率直に伝えると、「ドライどころか、まわりの人にはウェット過ぎて嫌われているんじゃないかと心配していますよ」と笑った。
IoT領域では、ITベンダーが提供するプラットフォームが乱立している感もあるが、園田さんは「データを溜めこみたいと考えているベンダーが多いのだろうが、われわれはむしろ異なるプラットフォーム間でIoTのデータを自由に流通させる動きを活性化する機能をenebularで担っていく」と話す。一つのプラットフォームに囲い込まれるのではなく、IoTが広く浸透した自律分散型の協調社会こそが、あるべき将来像だと考えている。(霹)
プロフィール
園田 崇
(そのだ たかし)
1995年、早稲田大学政治経済学部卒。電通での4年半の勤務を経て、南カリフォルニア大学大学院に進学しMBAを取得。モルガン・スタンレー証券、日興シティグループ証券を経て、ライブドア(現LINE)執行役員副社長就任。2006年、ウフルを設立。
会社紹介
2006年2月設立。クラウド製品の導入支援、カスタマイズ、PaaS上でのアプリケーション開発などを手がける付加価値再販ビジネスで成長。セールスフォース・ドットコムの有力なVARとして市場で存在感を発揮してきた。近年ではIoT関連ビジネスを新たな成長の柱とすべく注力している。資本金は6億4449万7500円、従業員数はグループ合計で273人(2018年5月1日現在)。