景気の波を見越して研究開発に投資
──がむしゃらに前に出て行ってしまうのは危険すぎるのではないですか。
だからこそ、自分たちが強みとなる技術をもつんです。オープンストリームが強みとしたJavaのように、その分野では他社に負けない水準にまで高められれば、リスクを乗り越えるだけの力になります。
豆蔵HDグループは、主に9社の事業会社から構成されていますが、各社が特色ある技術をもっています。例えば、事業会社の豆蔵は組み込みソフト、ネクストスケープは動画配信、ジェイエムテクノロジーは産業機械向けIoT、ニュートラルはコンピュータを使った設計・製造を支援するCAD/CAM/CAE、コーワメックスは自動車部品・ECU開発、エヌティ・ソリューションズはSAPコンサルティング、センスシングスジャパンは車載機器開発などに強い。
これらの分野でなら、自分たちが主導してプロジェクトを進めても、大きな問題になりにくいばかりか、収益面でも有利に立てる。
──業績についてですが、今年度(19年3月期)の経常利益は減益見通しです。8期連続増益だった豆蔵HDが、社長就任初年度でいきなり減益予想とは、どういうことでしょうか。
技術力を高めるために研究開発への投資を増やしているからです。組み込みソフトやハードウェアに近いところを強みとするグループ会社が多いことから、研究開発も割とハード絡みの領域が増える見込みです。
折しもIoTや車載制御、EV(電動輸送機器)といった領域で商談が活発化していますので、この領域でしっかりとビジネスを伸ばしていくには、競争力の源泉となる技術力の向上が欠かせないのです。
──中長期の成長のための先行投資ということですか。
足下の情報サービス市場は堅調に推移していますが、景気の波は周期的にやってきます。
仮に20年以降に五輪景気の反動減のようなことが起こるとしたら? 就労人口の減少で今以上に人材確保が難しくなったら? こう考えたとき、強みとする領域で一段と高い技術力をもつことが求められます。また、今の人員をさほど増やさなくても、生産性を高めて、十分な収益が得られるようにしなければなりません。資金的な余裕があればM&A(企業の合併と買収)もやりやすくなります。
こうした取り組みによって、より強い企業グループとなり、持続的な成長を目指していきます。
リーダーとして認められる第一歩は、
日々直面する困難事の矢面に立つこと、
そして稼げるようにすることです。
<“KEY PERSON”の愛用品>人生最初のキャリア・アップの記念品
企業ロゴ入りのパーカー・ボールペン。30歳になろうとするとき、技術職から企画・営業系の仕事に転職。そのときに企画したのが、この販促用のボールペンだという。「人生最初のキャリア・アップの記念として、今でも大切に使っている」と、お気に入りだ。
眼光紙背 ~取材を終えて~
システム保守のCEから、何回かのキャリアアップを経て社長にまで上り詰めた。CEの現場時代に学んだことは、顧客が困っていることを聞き出すこと。そのためには顧客との接点を多くもち、コミュニケーションを深めていかなければならない。
経営者として会社を引っ張っていく立場になると、顧客とのコミュニケーションはよりシビアになる。SIには問題プロジェクトがつきものであり、誰も手がけていない新しい領域になればなるほど、顧客もベンダー側も手探り状態になりやすい。問題が起きたとき、「顧客と向き合って決して逃げない」ことを信条にしてきた。
問題事を部下に押しつけずに、自らが陣頭指揮をとって解決する。こうした姿勢が社内の結束につながり、強い組織づくりに役立つ。CE時代から培ってきた徹底した現場主義は、経営者になった今でも貫かれている。(寶)
プロフィール
佐藤浩二
(さとう こうじ)
1969年生まれ。92年、東京理科大学理学部応用物理学科卒業。同年、日本ユニシス入社。98年に日本ヒューレット・パッカード、2004年にイー・ベンチャーサポート(現オープンストリーム)に入社。06年、オープンストリームが豆蔵グループに加わり、07年、オープンストリーム社長兼豆蔵取締役。08年、豆蔵ホールディングス取締役。18年6月20日、豆蔵ホールディングス社長就任。
会社紹介
豆蔵ホールディングスグループは、9社の主な事業会社から成り立つ企業グループ。連結従業員数は約2000人。組み込みソフト開発や産業機械、車載といったハードウェア領域に強い事業会社を多くもつ。昨年度(2018年3月期)の連結売上高は前年度比4.2%増の230億円、営業利益は同8.1%増の22億円。今年度の売上高は同2.0%増の235億円、営業利益は同12.7%減の20億円を見込む。