米Kofax(コファックス)は、情報の取り込みからアウトプットまでの一連のワークフローを自動化するエンジンとしてRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を位置付け、企業活動全体の情報処理のスピードを上げる。同社のレイノルズ・C・ビッシュ最高経営責任者(CEO)は、「RPA単体のツール市場では伸び代は限られる。企業の業務プロセス全体を自動化、高速化することでビジネスを伸ばす」アプローチによってユーザー企業の競争力を高めるとともに、熾烈な競争状態にあるRPA市場で勝ち残っていく方針だ。
業務プロセス全体の高速化 自動化を主軸に
――「Kofax」と言えば、OCRなど情報を取り込むキャプチャー技術に長けたベンダーとの印象が強い。そのKofaxが激戦区のRPA市場でどのようなビジネスを展開されているのでしょうか。
ご指摘の通り、紙文書やFAX、電子メール、モバイルといった複数チャネルからの情報の取り込みを強みとしてきた会社です。ただ、当社の製品群は、取り込んで終わりではなく、取り込んだデータや帳票を自動で仕分けし、ワークフローに乗せ、管理するプラットフォーム全体をカバーしています。ここがOCR単体のツールベンダーと最も違うところです。
当社はRPAでも同じアプローチです。業務プロセス全体を自動化することで、会社組織全体の効率化を推進していきます。私たちが考えているRPAとは、文字通り業務プロセスを自動化するものであり、決して従業員個人のパソコン画面上の操作を自動化するツールではありません。
個人のパソコンの操作を記録して、それを再生するだけのRPAツールは、確かに便利かもしれませんが、組織全体の業務プロセスを変革することは難しい。つまり、企業そのものの経営革新を行うには力不足なのです。
――では、KofaxのRPAは具体的にどのようなものなのでしょうか。
情報の取り込みから仕分け、ワークフローに乗せて業務プロセスを回すプラットフォームがあり、その
プラットフォーム上の運用を自動化するのがRPAだと位置付けています。当社の製品名で言えば、プロセス基盤が「TotalAgility Platform(トータル・アジリティ・プラットフォーム)」、RPAが「Kapow(カポウ)」です。この二つを組み合わせることで、会社組織全体の業務プロセスの自動化が可能になります。
――確かにRPAが“従業員の便利ツール”で終わってしまうと、会社全体としての生産性がどれだけ高まったのか分かりづらいですし、情報統制もききにくいということですか。
そうです。三菱UFJ銀行が、当社のTotalAgility PlatformとKapowを活用しているのですが、「業務プロセス全体の速度が高まる」ことや、「情報の振り分けやワークフロー、RPAの管理が一元的に行える」ことを評価してくれています。
従業員のパソコン操作の自動化を個別に行うと、情報ガバナンス(統制)に問題が出てしまうので、金融機関のような業種ですと使いづらいんですね。この点、当社製品は組織全体の業務プロセスを軸に据え、RPAはあくまでサーバー側でのプロセス自動化に力点を置いています。こうした点が評価されて、グローバルでの当社ユーザーの3分の1近くを、銀行や保険といった金融顧客が占めているのです。
就労人口の減少対策としてのRPA需要が顕著
――国内では減少していく就労人口への対応策や、働き方改革でRPAが語られる傾向が強いです。
確かにRPAを採用するきっかけは、企業を取り巻く環境によって大きく違いますね。欧米市場は、ライバルより一秒でも早く業務を回して、競争に打ち勝つためという意識が強いのに対して、日本ではご指摘の通り、少子高齢化や働き方改革の流れで採用するケースが多い。
実際、RPAで自動化できるところは自動化して、その分の人的リソースをもっと売り上げや利益に直結する部分に回す考え方は合理的です。欧米とは方向性に少し違いはありますが、それでもRPAによる
プロセス改革の需要が高まっていることに違いはありません。だからこそ当社は日本市場でのビジネス拡大に、これまで以上に意欲を燃やしているのです。
幸いにも今年5月に富士通が販売パートナーに加わってくれましたし、既存のビジネスパートナーである富士ソフトや都築電気、PFU、RPAテクノロジーズ、アクセンチュア、日本タタ・コンサルタンシー・サービシズなどとも、より密に連携してビジネスを伸ばしていきます。
――中国・ASEAN市場はどうでしょうか。
興味深いことに日欧米とはまた違うニーズがあるのですよ。人件費の高い先進国は、RPAによるプロセス改革で人員を削減できることに魅力を感じたり、日本のように人手不足を緩和する役割を期待するのですが、中国やASEAN、中南米などの成長国は、人件費はさほど高騰していませんし、高騰していたとしても人手不足が顕在化するほどではありません。結論を言えば、日欧米のようなRPA需要の高まりはあまりないです。
ただ、例外もあって、こうした成長市場には先進国が業務をアウトソーシングしているケースが多いのです。コンタクトセンターなどの顧客対応であったり、帳票処理であったりさまざまですが、総じて利幅の薄さが課題になっています。RPAで業務プロセスを自動化すれば、利幅の増大に直接的に結び付くだけに、業務アウトソーシング会社からの引き合いは非常に多いのです。
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