国・地域ごとにシェア拡大を目指す
――どのようにして売り上げを増やしていくお考えですか。
まずは既存の会社や事業の成長を意味するオーガニック成長が重要です。冒頭にお話した業務効率化、顧客接点の強化、新ビジネス創出の三つの領域をしっかり伸ばしていく。業務効率化や顧客接点でやらなければならないことは、まだたくさんありますし、新ビジネスの創出では、ユーザー企業のみならず、当社自身も率先してデジタルトランスフォーメーション(DX)を成し遂げていく必要があります。
グローバル全体の情報サービス市場を、いわゆる伝統的ITの市場と、AI/IoTといった新しいデジタル領域の市場の二つに大きく分けた場合、25年には既存ITと新しいデジタル領域が逆転すると予測しています。今はまだ伝統的ITの比率が高いのですが、デジタル領域の勢いは加速していますので、こうした市場の伸びをうまく捉えて、オーガニック成長を達成していきます。これに新規のM&Aも視野に入れていくイメージです。
――地域別に見るとどうでしょう。
グローバル第三ステージに向けて、各国・地域の情報サービス市場でのシェアを高めていきたいですね。直近ですと国内では9.3%程度の売り上げシェア、スペインやトルコ、チリでは5%前後、イタリア、ドイツ、コロンビアでは2%前後と、EMEA/中南米で存在感を高めてきました。一方、北米は市場そのものが大きいこともあり、まだ1%程度のシェアしかありません。トップ集団に入っていくために、国・地域ごとのシェアを一段と伸ばしていきます。
――世界トップベンダーによる競争が激しい北米は、苦戦気味とうかがっています。
今年度上期は少し落ち込みましたが、下期に入って北米での受注は回復傾向にあると手応えを感じています。例えば、米国医療保険会社から7年間で総額2億ドル(220億円)のITアウトソーシングを受注するなど大型受注も増えています。中長期にわたって取引を継続するとともに、一顧客当たりのビジネス規模も増やしていく。国内では年間の受注額50億円以上、海外では5000万ドル以上の顧客数は65社ほどあるのですが、グローバル第三ステージでは、これを100社に増やしていくことで顧客基盤を強化。ビジネスを安定的に、力強く伸ばしていきます。
Favorite Goods
仙台の文房具メーカー「大橋堂」の手づくり万年筆がお気に入り。高級素材のエボナイトを、職人が一本一本、足踏みろくろで削り上げる「独特な製法で有名」とのこと。「中学から大学まで仙台で過ごしたこともあり、愛用している」と話す。
眼光紙背 ~取材を終えて~
“ダジャレ効果”で思いを伝える
本間洋社長は、冷静で物腰の柔らかい話し方を好む。それでいてダジャレが好きという横顔も併せ持つ。
数年前、役員懇談会で挨拶をしたときのこと。会場に集まった記者を前に「“ほんま・よう”お越しくださいました」と切り出した。咄嗟のことでダジャレかどうか判別できず、一瞬、間があいたのち、会場のあちこちから笑いがこぼれた。
今回のインタビューでも、グロース(成長)、アーニング(稼ぐ力)、トランスフォーメーション(転換)、シナジーの頭文字をとって「GETSですね」と、ダンディ坂野さん風のダジャレにしてみたり、「職場の雰囲気はATM(明るく、楽しく、前向きに)」などと、大真面目な顔で淡々と話すため、どこまでが冗談なのか、時々分からなくなるのが本間社長らしい話し方である。
世界53カ国・地域、214都市に約11万8000人の社員を束ねるトップとして、その言葉はどうしても重くなってしまう。時折、突拍子もないダジャレを混ぜることで、張り詰めた緊張を適度にほぐし、思いを伝える効果があるのかも知れない。2019年も、「ATM」で大きな商談を「GETS」し続けたいものである。
プロフィール
本間 洋
(ほんま よう)
1956年、山形県酒田市生まれ。80年、東北大学経済学部卒業。同年、日本電信電話公社入社。2001年、NTTデータ情報ネットワークビジネス事業本部カードビジネス事業部長。07年、広報部長。09年、執行役員広報部長秘書室長兼務。10年、執行役員流通・サービス事業本部長。13年、常務執行役員第三法人事業本部長。14年、取締役常務執行役員エンタープライズITサービスカンパニー長。16年、代表取締役副社長執行役員法人・ソリューション分野担当。18年6月19日、代表取締役社長就任。
会社紹介
NTTデータの今年度(2019年3月期)連結売上高は、前年度比3.0%増の2兆1000億円、営業利益は15.3%増の1420億円を見込む。今年度を最終年度とする中期経営計画では、連結売上高2兆円、海外売上高比率50%、15年度比で営業利益50%増を目標に据えており、ほぼ近い数値に着地できる見通し。