年率40%前後で売り上げを伸ばしてきたテラスカイ。その成長性が認められて東証一部へ昇格を果たす。セールスフォース・ドットコムやアマゾン ウェブ サービス(AWS)のプラットフォームを巧みに駆使して、ユーザー企業のクラウド活用ニーズを貪欲に取り込んできた。サーバーワークスをはじめとする事業会社に出資する一方で、グループ会社のBeeX(ビーエックス)は、TISやNTTデータなど大手SIerからの出資も獲得。この3月1日には投資事業を手掛けるテラスカイベンチャーズも立ち上げるなど、次の成長に向けた動きを活発化させている。
成長の秘訣は基幹システムにあり
――ここ数年、年率40%前後で売り上げを伸ばすなど急成長し、昨年11月には東証マザーズから東証一部に昇格も果たしています。まずは、成長の秘訣を教えてください。
当社はセールスフォース・ドットコムのプラットフォームを活用したビジネスを主軸としており、まずはセールスフォース自体のビジネスが大きく伸びたことが背景にあります。セールスフォースで培ったクラウドの知見を生かすかたちで、近年ではAmazon Web Services(AWS)を使ったビジネスも伸びています。いま、勢いがあるセールスフォースとAWSの両方を自社のビジネスにうまく生かせたことが業容拡大につながったと言えます。
――セールスフォースやAWSのビジネスを手掛ける多くのベンダーの中で、頭一つ抜きん出ることができたのはなぜですか。
そうですね。一つは当社がセールスフォースやAWSといったクラウドビジネスに専念しているベンダーであること。クラウドビジネスが「数ある事業の中の一つ」といったベンダーではありません。もう一つが、私を含めて経営幹部の多くが企業向けSIビジネスの経験が豊富であることだと思います。
当社が起業した10年余り前は、クラウドそのものの認知度がまだ低く、せいぜい軽めのサブシステムや開発環境、ウェブ系の基盤として使われることが多かった。その頃、起業したスタートアップ企業の多くも、セールスフォースを規模の小さい企業や業務に応用する傾向が強かったように思います。しかし、当社は当初から大規模エンタープライズ向けビジネスを指向していましたので、そういう点が大きく違ったのではないでしょうか。
――テラスカイ独自のアプリケーションやサービスに積極的な投資を行い、ラインアップも充実させていますね。
力を入れて開発しているサービスのうちの一つが「mitoco(ミトコ)」です。いわゆるグループウェアですが、セールスフォース上に構築されている点が他社製品と大きく異なります。外部システムやマルチデバイス、IoTなどとの接続性が非常に優れたセールスフォースのプラットフォームを使うことで、より自由度の高い企業向けコミュニケーションを実現。グループウェアベンダーとして“後発の優位性”を発揮している部分です。mitocoは、この春にもAIアシスタント機能を新たに追加するとともに、ビジネスチャット「LINE WORKS」や「Slack」など他サービスとの連携も積極的に進めて、競争優位性を一段と高めていきます。
ベンチャー投資会社を立ち上げ
――この3月1日付で、ベンチャー企業を育成するテラスカイベンチャーズを設立されましたが、その狙いはなんですか。
当社は、ディストリビューターのイグアスや、IoTインテグレーションのエコモット(札幌市)、AWSに特化したクラウドインテグレーターのサーバーワークス、SAPビジネスに強い東洋ビジネスエンジニアリングなどに出資してきました。これまではテラスカイ本体で投資事業を手掛けていたのですが、もっと専門特化させた組織で展開したほうが効率がいいとの判断で、テラスカイベンチャーズを立ち上げたわけです。
投資事業といっても、当社事業と親和性が高く、相乗効果が見込める事業会社に焦点を絞って出資してきました。分かりやすく言えば、「出資先から商品やサービスを仕入れて当社が売る」関係が成り立つような投資です。業種も業界も違うような会社には、投資していませんでした。新会社のテラスカイベンチャーズは、従来の事業会社への出資モデルは継承しつつ、投資専門会社として、これをもっと発展させていこうと考えています。
――テラスカイグループ会社のBeeX(ビーエックス)は、逆に外部からの資本を受け入れています。
ビーエックスは、基幹業務システムのクラウドマイグレーション事業を手掛ける会社です。簡単に言えば、客先設置で動いているSAPをAWSに乗せ換える需要が予想以上に大きく、急速に伸びています。昨年、ビーエックスに大手SIerのTISとNTTデータに相次いで出資していただきました。サーバーワークスからも出資してもらっています。この背景には、クラウドマイグレーションの需要がとても大きく、ビーエックス単体では対応しきれない部分が出てくることが挙げられます。
TISとNTTデータは、SAPをはじめとする基幹業務システムに非常に強いSIerで、当社と提携関係にある東洋ビジネスエンジニアリングも国内で最も早くからSAP事業を手掛ける老舗です。いずれもSAPの古くからのユーザー企業を多く抱えており、ビーエックスが強みとする基幹系システムのクラウドマイグレーションのノウハウは大いに役立ちます。ビーエックスだけではカバーできない基幹業務の深い部分をカバーしてもらいつつ、円滑にクラウドへと移行できる布陣だと自負しています。
AWSに移行したあとも、よりクラウド環境に馴染むよう手直ししたり、運用を最適化したりするのは、AWSに強いサーバーワークスが力強い味方になってくれます。また、業容拡大に対応するため3月1日付でテラスカイ本体のAWS事業部門をビーエックスに移管して、ビーエックスの社員数を一気に倍増させました。
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