100人で100億円の売上高を目指す
――久保さんがDDSに入社されて変えたことは他にありますか。
社内的にもいろいろな点で変更しました。大きいのは、営業活動やプリセールスをテクノロジーを活用して徹底的に効率化したことですね。リード抽出やアポイントの取得は外部のサービスを活用し、DDSの営業マンはアポイントが取れたお客様に訪問するところからが仕事になりました。営業効率はこれで相当上がりましたね。また、以前は技術者も必ず営業に同行していたんですが、技術的な説明などはテレビ会議を活用しています。
――社長就任後に変えたことは?
社長に就任した後の変化というのはほとんどないですね。これまでやってきたことをさらに進化させて成長していくということです。
DDSは現在、従業員数が50人弱の会社ですが、少数精鋭であることが非常に大きな強みだと思っています。営業の効率化などもその強みを生かすためのものです。一人一人の業務効率性を非常に高く保つことで、成長がしやすくなる。さらにビジネスを伸ばしていくためには、組織を大きくしていくのも一つの手であり、実際に人的リソースを増やそうとは思っていますが、従業員一人当たりの業務効率を上げ、一人一人の価値を上げていくことをより重視しています。クロージングレートを大きく上げたり、お客様を呼ぶマーケティングのテクニックを上げるとかですね。
――在任中に達成したい目標としてはどんなことを設定されていますか。
今年度は通期売上高で16億円を目標にしていて、先ほども申し上げたように順調に推移しているところですが、早く100億円の企業にしたいと考えています。そして、それは今の人員の2倍、従業員数100人くらいで達成したいんです。
――少数精鋭で稼げる強い企業になるという感じですね。
手応えはあります。クラウドの時代にこそDDSが求められているんです。DDSがずっと取り組んできた生体認証が、物理空間とサイバー空間をつなぐ重要なテクノロジーになるのは間違いない。ID/パスワードがシステムの大きな脆弱性として指摘される中で、DDSが掲げてきた「バイバイパスワード」というキーワードはより価値が増していると思っています。FIDOはまだまだ普及の途上ですが、アップルのウェブブラウザー「Safari」が対応すれば、一気に普及が拡大し当社の商機も広がると期待しています。
さらにブロックチェーンで日本で指折りの知見と技術力をもつカレンシーポートと協業し、社内にもブロックチェーン推進事業部を立ち上げました。認証基盤とブロックチェーンの融合もこれからのDDSの大きな強みになるでしょう。
Favorite Goods
小物類のセレクトはビジネスパーソンの身だしなみとして重視している。普段使いの腕時計は銀婚式で奥様から贈られたというグランドセイコーだ。実用性と品格のバランスが評価ポイント。クロスのボールペンも同様の理由で愛用している。
眼光紙背 ~取材を終えて~
「いい会社」を追求し続ける
自身のキャリアを集大成するにふさわしい、心底惚れ込んだ会社――。久保氏の言葉の端々に、ディー・ディー・エス(DDS)に対するそんな思いが滲む。
FIDOアライアンスに国産ベンダーとしていち早く参画するなど、生体認証をベースにしたクラウド時代の認証ソリューションをリードする存在であるというビジネス上の優位性はもちろんだが、企業としてのビジョンや文化にも強く惹かれたことが、入社の大きな理由になっているようだ。
「創業者の三吉野(健滋会長)は、『いい会社をつくる』という経営理念を掲げたが、私が目指すのもまさにそれ」なのだという。DDSが考える「いい会社」とは、顧客、株主、社員、パートナーそれぞれが適正な利益を享受できるビジネスモデルを持つ会社だ。ただし、その具体的なかたちは時代によって変わり得る。それぞれの社員がそれぞれの「いい会社」像を追求・実現できる風通しのいい会社であり続けることを社長としての重要なミッションに掲げている。
プロフィール
久保統義
(くぼ のりよし)
1964年、愛知県生まれ。愛知工業大学工学部卒業。愛知県のメーカーに入社し、その後、ジャストシステム、シマンテック、トレンドマイクロ、シスコシステムズを経て、2009年2月にクオリティグループ(現クオリティソフト)に移籍。11年12月には当時傘下だったクオリティソフトの代表取締役社長に就任(その後クオリティは、クオリティソフトを吸収合併し、社名をクオリティからクオリティソフトに変更)。16年、ディー・ディー・エス取締役、17年に専務。今年3月より現職。
会社紹介
PCやスマートデバイス向けの認証ソリューションなど、生体認証技術を活用したセキュリティ製品を開発・販売している。1995年設立。2005年に東証マザーズ上場。18年12月期の売上高は前期比53.7%増の12億1500万円。19年12月期は33.7%増の16億2500万円を見込む。