クラウドとオンプレミスにまたがるハイブリッド環境のバックアップに強いソリューションとして、ルーブリック(Rubrik)の名を耳にする機会が増えてきた。同社創業者のビプル・シンハCEOは、バックアップ/リカバリーというデータ保護機能よりも、クラウドを含む企業全体のデータを管理するというコンセプトを強調する。システムのクラウド化、ひいてはデジタルトランスフォーメーション(DX)の成功のためには、データ管理の仕組みを欠かすことができないという。
クラウドの俊敏性を
生かせるデータ管理製品
――ルーブリックが創業した2014年当時でもバックアップ/リカバリーというと、すでにコモディティ化した製品カテゴリーというイメージがありました。なぜ、この領域で事業を興そうと考えたのですか。
ルーブリックを設立する少し前から、AWSやAzureといったパブリッククラウドがエンタープライズITの世界に参入してきました。しかし、ハイブリッド/マルチクラウドという新しい環境の中で、エンタープライズのデータがどのように管理されるかということを考えると、レガシーなアーキテクチャーでは用をなさないだろうと思っていたんです。
当社の最初の製品は、企業のデータセンターとパブリッククラウドを接続するためのものでした。データセンターにもともとあったアプリケーションのバックアップをとって、即座にリカバリーできるようにするとともに、データをクラウドにアーカイブすることで長期保存を可能にするというものです。従来のやり方では、リカバリーの際にお客様はクラウドからデータセンターに全部のデータを持ってくる必要がありましたが、ルーブリックを使えば、必要なファイルのみをダウンロードしてシステムを回復できます。これによって、俊敏性とコスト削減というメリットをお客様に提供しています。
――単にクラウドに対応したバックアップソフトを作るのではなく、ハイブリッドクラウドの時代に適したデータ管理の仕組みを提供するという方針を、最初から掲げていたということですか。
当社の事業開始を正式に発表する前、会社のWebサイトを準備している段階でも、ルーブリックのキャッチコピーは「クラウドデータマネジメントのプラットフォーム」でしたよ。ディザスタリカバリー(災害復旧)、サイバー攻撃からの回復、コンプライアンスやガバナンスの強化、ハイブリッド/マルチクラウド環境でのデータの移動など、お客様のさまざまな要求にお応えできるデータマネジメントプラットフォームを構築したいと、常に考えていました。
他社の追随は
むしろ自信につながる
――今、ルーブリックだけでなく多くのバックアップ製品ベンダーが、データ保護から、企業全体のデータを管理するソリューションに進化するという戦略をとっています。
私たちが事業を開始した時点では、市場はバックアップ/リカバリーだけに注力している状態でした。クラウドデータマネジメントというビジョンを初めてこの市場にもたらしたのはルーブリックであると自負しており、もし業界全体がそのビジョンを追いかけてきているのだとしたら、ある意味で当社にとってはとても喜ばしいことで、自信にもつながります。
ただ、私たちは単にビジョンだけを掲げているだけではなく、多数の具体的なソリューションを投入し続けています。ここが大きな差別化ポイントです。例えば、当社の「Polaris」は、メタデータ駆動型データマネジメントというビジョンを持つ初めてのプラットフォームです。この上で、全世界の環境に分散したデータを一元管理できる「Polaris GPS」、機械学習を用いてランサムウェアの活動を検知・無力化する「Polaris Radar」、データを自動分類し機密情報の漏えいを防ぐ「Polaris Sonar」など、お客様にとって本当に価値のある機能を提供しています。もちろん、バックアップ/リカバリー機能もコアとなる強みとして生き続けています。
――クラウドデータマネジメントのビジョンを製品として実装するにあたって、何か技術的な特徴や優位性はありますか。
私たちは、単一のソフトウェアの中で「メタデータ」と「データ」を一つにまとめた“Self-describing”(自己記述)型データを作ることを考えています。いったん自己記述型のデータが作成されると、それを異なる環境上に即座にリカバリーできるようになるので、企業のデータセンターにあるアプリケーションやデータをクラウド上に移すことも簡単に行えます。データのコンテキスト(文脈)に応じた分析ができるようになるので、ランサムウェアの活動の検出や、機密情報を含んだデータの発見などが可能になります。検証や開発のための環境をすぐに構築し、一元管理することもできます。つまり、私たちのアーキテクチャーには、企業のイノベーションを加速できるという優位性があるわけです。
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