ITコンサルティング事業を展開するフューチャーが2019年、設立30周年を迎えた。その節目に「次世代」を担う存在としてグループの中核企業・フューチャーアーキテクトの社長に就任したのが神宮由紀氏だ。業務コンサルティングとシステム構築の能力を強みに、ITと経営の両軸で顧客のデジタル戦略を支援。グループの新たな方向性をけん引していく。
世代交代で新たなフューチャーに
――19年春の社長就任から1年4カ月ほど経ちます。まずはこれまでの振り返りをお聞かせいただけますか。
私がフューチャーアーキテクトの社長に就任した昨年は、フューチャー設立30周年の年でした。若返り・世代交代を図るなかで社長に就任し、私と齋藤(洋平・フューチャー取締役CTO)とで次世代の体制をどうつくっていくかを考えながら、昨年1年は事業を推進してきました。
11月には1000人程のお客様をお招きした30周年記念パーティーを開き、金丸(恭文・フューチャー会長兼社長)と石橋(国人・同社副社長)の両者から「次世代に」というメッセージを明確に表明しました。このタイミングで、お客様も社員も含めて、世代交代をして新しいフューチャーになっていくんだということが実感できたと思います。
――次世代の体制づくりとして、どのようなことに取り組んだのでしょうか。
根本的なところですが、フューチャーの理念や存在意義を改めて考え、社員全体に浸透させていくことが、新しい世代になるからこそ重要だと思い力を入れてきました。幹部も若返りに加えて抜擢も行い、会社として“変わった”という空気が出てきていると思います。お客様に対するところでも、AIなど新しい取り組みの提案力を強化し、全員がエースという意識をもって価値を高めています。
――提案力の強化について、もう少し詳しく教えていただけますか。
お客様のニーズとして、世の中の人材不足を背景に企業経営を大きく変えないといけないということがあります。地方だけでなく都会でも高齢化や人材不足が進み、さらに若手の働き方の意識が変化してきているということもあって、ITをどう活用していくかという危機感が強まってきています。
もう一つは「2025年の崖」です。COBOLなど昔のシステムの技術者が減っていくのと相まって、古い資産の刷新と最新のAIなどを使った取り組みをしないといけないという流れが、昨年から今年にかけて来ています。
そうしたニーズに対して明確に当社としての考え方を持ち、お客様と一緒に考え、活動しています。ただこうした状況も、この新型コロナ禍で大きく変わってきているのですが。
業務改革とシステム改革を同時に
――IT業界でもコロナ・ショックの影響がさまざまなところに出てきています。御社のビジネスへの影響は。
当社にも影響は出ています。コロナで営業停止を余儀なくされた業種など、一部のお客様ではビジネスに多大な影響を受け、戦略投資が中断しているところがあります。
一方で、食や物流など急激なニーズが生まれたところもあり、そうしたお客様からの引き合いは逆に増えていて、二極化しているように思います。
当社では業種ごとにポートフォリオが上手く4分の1ずつくらいに分かれていて、一部は大きく減り、ほかはそこまで影響を受けていないという感じです。
――今後のビジネスの見通しについてはどうみていますか。
ビジネスに大きな影響のあった業種については、この1年くらいは盛り上がることはないだろうと思います。
その代わり、テレワークができないとか、例えば物流で複数拠点をマネージできる仕組みがないといった企業は、2025年の崖にぶつかるような企業と同じだったりします。そうした企業が少し引き伸ばそうと考えていた大規模投資は一気に進む可能性があり、私たちのビジネスにとっては追い風でもあります。
モノの発注や仕入れは毎日遅らせることができないビジネスの根幹になる機能ですので、そのあたりに課題をお持ちのお客様では、これを機にという機運がすごく高まっています。私たちはどちらかというとそういった仕組みを得意としています。
――御社の存在意義とは何か、改めてお聞かせください。
昔から変わっていないと思いますが、技術の変化が激しいなかで、それをお客様だけで目利きするのは難しい。プロである私たちがいろんな勉強をしていても難しい世界なので、そういった面で頼られるところが多い。また、業務改革とシステム改革を同時に行うところでも愚直に経験を積んでいますので、そうした強みも変わっていません。
当社は企業の中枢の仕組みをつくることが得意なので、そこの価値はより高まるとみています。抜本的に働き方を変えたいときには業務を立て直さないといけないので、そこではやはりコンサルティング能力とシステム構築能力の両方が必要になってきます。
業務のコンサルとシステム構築の両方を組み合わせつつ、お客様のニーズにあわせて最先端の技術を活用するということができる会社です。あまり物販はしていないので、ソリューションやパッケージありきではない提案ができるというのもフューチャーの立ち位置になっています。
――御社の強みはまさにそこにあるというわけですね。
当社では数年前からAIなど専門の技術チームを立ち上げているほか、業務的なチームもたくさんあって、ノウハウがたまってきています。こうした知財はコンポーネントという形で持っていますので、それらを組み合わせてスピーディーにお客様にお届けするということを行っています。
ただそこで大きな売り上げを得たいわけではないので、良ければ適用するし、お客様のためには別のものが良いと思えば別のものを提案する。そういった自由さがあるのがフューチャーです。
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